「自分にとって大切な人だから」──誰かを支えているあなたへ、命を守る身近なゲートキーパーの輪
若者は、友だちの異変に対する早期発見能力が高く、優しい心をもっている半面、問題を解決する能力は未熟な部分もある。そうした若者たちの等身大の姿を公認心理師や臨床心理士、精神保健福祉士など心理の専門家が知り、サポートできる仕組みが必要だと石井さんは言う。 「身近な支援者と専門家との連携が速く、スムーズにできる仕組みづくりが必要です。専門家は当事者を支える方法やスキルは持っているのですが、支え手の支援に関しては教わる仕組みがないので、当事者以外は対応を断るケースを多くみられます。専門家を育てる教育システムを整えることが必要だと考えています。例えば、子どもや若者のゲートキーパーと〈ひきこもり支援団体〉や〈ひとり親家庭の相談窓口〉などにつなぐといった的確な連携を図っていければ、早期発見・早期対応ができて、悩みを抱える人が救われます。また支え手も助けられるような社会が生まれる。そういう関係性を広げていけば、自殺は減っていくと考えています」 石井さんによると、「この子がいるから、私は死なない」というかけがえのないゲートキーパーが、この世の中にはいるという。ただ、こういう人のことは統計には出てこない。けれど確実に人を支えている。止まり木のように、疲れたときに羽を休め、気持ちをリセットできる場所があるというのは、つらさを抱えた人にとっても心強いのではないだろうか。