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<新型コロナOISTによる洞察>5 ウイルス拡散の経路追跡 無症状者の移動がリスクに

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琉球新報

 世界各国が新型コロナウイルス感染症(COVID19)を阻止するために国境を閉鎖したのとは対照的に、科学者はサイエンスの境界を越え、この脅威を理解し立ち向かうための専門知識とデータを蓄積しています。私は今、世界中に散らばる国際研究チームの一員として、COVID19がどのように拡散するかというパズルをつなぎ合わせる、いわば探偵のような仕事をしています。  感染の初期、感染例は中国武漢市の海鮮市場に集中し、しばらくして、人口1100万人の武漢市内でも、数千人が利用する漢口駅の近くに集中していました。  2019年12月、武漢市の医師らは、標準治療で効果が見られないウイルス性肺炎の患者を診察していました。後にそれがCOVID19と判明するまで、医師たちが気付かない間に、その感染は想像もつかないほど広がっていました。1000人にも及ぶ、見えない感染者集団が、漢口駅をはじめとする武漢市内を移動、通過していました。  一人の感染者は、平均して2・3人に感染させてしまうため、たとえ完璧な対応をしていても、COVID19の拡散を止めることはできなかったでしょう。しかし中国当局がこの急速に高まっているリスクを公表したのは、12月31日になってからのことでした。  タイミングも災いしました。この時期中国は旧正月を迎え、数億規模の人が帰省や旅行と、大移動したのです。データによると、少なくとも17万5千人がこの時期に武漢を出たといいます。また、20年1月中に700万人近くが無制限に市内を出入りしていたのです。  1月21日、中国の当局者がヒトからヒトへの感染のリスクを認めるまでに、北京、上海に加え中国の他の主要都市で集団感染が発生していました。  このような状況が発生している間、海外渡航も制限されませんでした。月間の旅客データによると、武漢からだけでもシドニーに2200人、ニューヨークに900人、バンコクには1万5000人以上が移動したことを示唆しています。  中国国外での最初のCOVID19の症例はタイで確認されました。60代の女性が1月初旬に武漢から到着し、発熱、頭痛、喉の痛みの症状を発症しました。  さらに1月23日までに、初期の症例は日本、シンガポール、韓国、香港、アメリカでも発生しました。科学者たちは現在、感染した旅行者の約85%は発見されなかったと推定しています。  武漢が封鎖され、航空会社が運航便を欠航するようになったのは1月末になってからでした。1月31日までに、COVID19は26カ国の30を超える都市で増加しており、ほとんどの感染症は武漢からの旅行者によるものでした。  現在、このウイルスは世界の他の地域で局所的に広がり、2月14日までには感染症が定着してしまいました。3月上旬にイタリア、イラン、韓国で数千件の症例が報告された時、中国はもはや主要な感染源ではありませんでした。実際、中国が患者の検査、追跡、隔離を体系的に開始すると、中国国内の新規症例は劇的に減少しました。  シンガポール、香港、韓国でも同様の対策が行われ、ウイルス拡散を遅延させることが可能であると示されました。  検査が遅れた米国では、トランプ大統領がヨーロッパからの入国をほぼ全面停止したものの、COVID19はすでに自分たちにとって安全な足場を確保していたようです。  3月20日までに、シアトルとニューヨーク市に地域的に広がり、それから全国に蔓延(まんえん)し、その勢いは対策の力を上回ってしまいました。  沖縄での最初の感染は、2月上旬のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」によるものでしたが、効果的に制御されました。翌月に起きた感染は、飛行機を利用した乗客によってもたらされ、地域社会での感染につながりましたが、県の緊急対応により、ウイルスの蔓延は阻止されました。ここ数週間、沖縄県内での新規感染者は出ていませんが、それでも警戒を怠ることはできません。このウイルスは、症状はなくてもウイルスを保有する無症状病原体保有者と呼ばれる人と一緒に移動する可能性があるため、リスクはまだ残っているのです。 ……………………………………………………………… マヘッシュ・バンディ  Mahesh Bandi OIST准教授(非線形・非平衡物理学ユニット)インド出身、米国ピッツバーグ大学で博士号(物理学)、ハーバード大学、ブラウン大学等を経てOIST着任。

琉球新報社

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