高畑充希『光る君へ』中宮・定子、ついに天に召される…塩野瑛久さん、ウイカさんに愛され、吉高さんには心配されて
◆出家のシーンは家族みんなで頑張った 演じていて一番悩んだのは、定子が政治的な考えを持ち始める時です。出家する前にそういうくだりがあるのですが、もちろん自分の家族を守らなくてはいけない立場なので、父や兄が悪いほうに行かないように力を使いたいし、それは定子の中では芯の通っているところ。同時に、そこに夢中になると、一条天皇への愛情も嘘に見えてしまう。すごくそのシーソーが難しくて、あざとく見えてしまうのではないかと、けっこう悩みました。 家族のことも考えなくてはいけないけれど、一条天皇との愛も嘘じゃない。お互いにちゃんと愛し合っていたというようにしたくて、監督ともよく相談していました。そのシーンのあたりは、針の穴に糸を通すといいますか。ご覧になっているとさらっと流れていくシーンかもしれないのですが、一条天皇との関係性が政治のために仲良くしている印象になると、そこから先が全部そう見えてしまう恐怖がありました。 定子が自ら髪を切って出家するシーンは、台本で読むと、驚きで終わる印象がすごく強かったんです。実際には、ものすごく感情のテンションやエネルギーが高い幕切れにしたいと思っていました。ただ、現代の感覚だと、髪を切ること自体はあまり大事(おおごと)ではないですよね。当時は、出家することはみんなの前で自殺するぐらいの感覚だったそうです。だから、髪を切っただけなのにどうしたの? というふうに映らないといいなと思いながら演じていました。 そうして定子が髪を切るのはあらゆることの結果で、そこに至るまでに兄が駄々をこねてくれたり、母が号泣したり、いろいろな方がお芝居をつないでくださった。あのシーンは緊張感を持って撮影に挑みましたが、みなさんが一段ずつお芝居を構築してくださって、家族みんなで頑張りました。 なかでも伊周には、最初「この人がしっかりしていたらこんなことにならなかったのに」と思っていたんですが(苦笑)、三浦翔平さんがどこまでも不恰好に伊周を演じてくださって。三浦さんはもともと美しい方ですし、ちょっとでもかっこつけたい気持ちが出てもおかしくないですが、ご本人が全力でダサさ、哀れさのようなものを表現されていた。それを見ていると、怒りよりも、1周回って愛せてしまうといいますか。私は三浦さんの伊周をすごく素敵だなと感じました。
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