超電導リニアの巨大穴を造った「ニューマチックケーソン」とは?自重で地中に沈み込む
「ニューマチックケーソン工法」による最初の非常口完成
JR東海がまず品川~名古屋間で建設を進めている、超電導リニアモーターカーを使った中央新幹線。名古屋市とその近郊を大深度地下で進む第一中京圏トンネル(約34.2km)の坂下非常口(愛知県春日井市)が完成し、2020年12月24日(木)、報道陣に公開されました。 【図解】なるほど!目からうろこな「ニューマチックケーソン工法」の仕組み 坂下非常口は、直径36.9m、深さ84.5mもの巨大な円筒形の縦穴。その穴の底(底の厚みがあるため深さ76.4mの地点)から、「シールドマシン」と呼ばれる掘削機で水平方向に、中央新幹線の第一中京圏トンネルを掘り進んでいく拠点になるほか、営業開始後は換気口や非常口として使われます。 この坂下非常口は、先述した非常口の巨大円筒が自重で地下深くへ沈み込み、できあがるという、門外漢には驚きの「ニューマチックケーソン工法」で完成した最初の中央新幹線非常口です。 この工法は、簡単にいうと巨大円筒の底の部分に掘削機を設け、その掘削機で地中へ掘り進むと、巨大円筒は自重で沈み込んでいき、非常口が完成する、という具合になります。
水圧に空気圧で対抗
このとき、掘削機のある巨大円筒の地中側先端部分に、圧縮空気を送り込んでいるのが大きなポイントです。 地中を掘るときは地下水の噴出が注意されるところですが、圧縮空気で掘削機のある巨大円筒先端部分の空気圧を上げることにより、その圧で、掘削しても地下水が出てこないようにされています。 「ニューマチックケーソン工法」は、英語で書くと「Pneumatic Caisson Method」、空気圧を使って函を沈める、という文字通りのもの。掘削の仕方によって、巨大円筒の沈み方をコントロールするそうです。沈むスピードは1日20~30cm程度とのこと。 中央新幹線の都市部に設けられるトンネル非常口の工法は、大きくこの「ニューマチックケーソン工法」と「連続地中壁工法」の2種類があり、地下水の状況や、水を通さない層の位置などによって、使い分けているそうです。 なお巨大円筒は、最初にその全体を地上で造ってから沈めるのではなく、沈めながら順次、大きく造っていく形。 この坂下非常口から2021年12月、リニア中央新幹線の本線トンネルを掘削するシールドマシンが発進する予定だそうです。
恵 知仁(鉄道ライター)