もはや3台すべてが伝説! ナナサンRSから始まった空冷911の「RS」ヒストリー
993 Carrera RS(1996)
空冷エンジンで最後のRSとなりましたが、生産台数は意外と少なくて1104台に終わっています。おそらくは、アメリカの法規に合わず、輸出できなかったことがひとつの原因だと考えられるでしょう。 とはいえ、3.8リッターのフラットシックスは993に投入されたバリオラム(可変吸気システム)の威力もあってか300馬力を発生し、0-100mphをわずか11.2秒で加速するという俊足ぶり。初めて採用された6速MT(G50/31)が加速重視のギヤスケジュールだったこと、そしてRSらしく約100kgの軽量化が施された1280kgという車重もあって、運動性能は歴代RSのなかでも頂点に達していたのではないでしょうか。 また、もともと空力特性に優れていた993ですが、フロントの小さなリップスポイラーと、固定式に変更されたリヤウイングによって揚力抵抗をほぼゼロにしているのもRSの大きなアドバンテージに違いありません。RSモデルらしい手動ウインドウ、エアバッグとエアコンのないベーシック(M002)は生産台数の10%にも満たず、それらの装備を載せたツーリングは700台以上を占めています。 さらに、993RSではクラブスポーツと呼ばれる仕様があり、これは後の993RSR3.8がGT選手権に出場する際のホモロゲーションモデルとなっています。レギュレーションによれば50台以上とされているのですが、993RSクラブスポーツバージョンはほとんどがレースカーのベースなどに用いられたと見えて、ナンバー付きは滅多に見られません。仮にオークションに出品されたとしたら、1973年のRS並みに高騰することは間違いないでしょう。 空冷エンジンとしては最後のRSとなりましたが、初代から20年以上を経ても、昔ながらのスパルタンさをしっかりキープしていたこと、それでいてモダンなシャシーとエンジンを存分にチューニングしていたという点では、993RSこそRSモデルの集大成といえるのではないでしょうか。
石橋 寛