男性が必死になる昇進試験に高卒女性が準備1週間で挑んだ結果…「89歳・現役プログラマー」のメガバンク時代
■メガバンクという大組織に勤めても、会社には依存せず生きる 管理職になってからは、最初は銀行で監査役という名で仕事をし、後に関係会社に出向という形に。そこで部下を持つことになる。なかには優秀な子会社社員もいて、なんと転職を勧めてしまったという逸話も。 「『こんな会社にいちゃダメよ。ここは大企業の子会社だから、どんなにできても、部長とかにはなれない。せっかく仕事ができるのだから、他の会社に行った方がいい』と言うと、うれしそうにして、『実は僕、有名なソフトウェア開発会社の2次試験を通過しているんです』なんて言うわけですよ。 親会社で飼い殺ろしにされていても、暮らしてはいけるけど、自分の力を発揮できる場所に行った方が良いから、と。それで彼は転職していきました。子会社の社長には優秀な部下は引き止めるものだと言われたけど、何年か経って、その会社が上場して彼は社長になっちゃって。からし明太子を送ってきて『あのとき、若宮さんが背中押してくれたから』と感謝されています」 ■パソコンの操作を間違って壊したとしても、怖くはない それにしても、デジタルネイティブ世代と違い、現役世代でもPCやスマホ操作に戸惑いや不安を感じる人は多数いる。それどころか全てが手作業だった高齢世代には、「機械を壊してしまうのではないか」「システムがおかしくなってしまうのでは」と怖さを感じてしまう人が多いだろう。 「実際やってみて、おかしくなっちゃったとかはいくらでもありますよ。パソコンでもスマートフォンでも、機械っていうのは予期しないことになるものですから。ハードディスクの中に『マーちゃん(若宮さんのハンドルネーム)を困らせる会』があって、その会員みんなが力を合わせて、大変なことをするんですよ(笑)。でも、ソフトウェアがおかしくなっても、お金を払えばサポートしてくれるし、パソコンの1つや2つおかしくなってもたいしたことじゃないですよ」 実は2017年にApple社の招待を受けたときも、Apple日本支社を名乗る見知らぬメールがきっかけで、迷惑メールかと怪しみつつ、思い切って「パソコンの1つや2つおかしくなっても良いから」と開けてみたら、電話番号が書いてあり、電話してみると、なんとシリコンバレーへのお誘いだったのだと笑う。 そんな若宮さんは人生の後半戦を振り返り、こんな信条を語ってくれた。 「私は決断も努力も何もしていないの。もともと面白がりで、危険があっても、それよりも好奇心の方が勝っちゃうだけ。例えばパソコンを買ってくると、真面目な人は入門書みたいな感じで、マニュアルを第1章第1項から読み始めるけど、私はそういうのが苦手で、自分の知りたいことだけ知ればいいんですね。目標を立てるのも苦手。目標を立ててきちんとやろうとしても、世の中は次から次と変わっていくんだから、だったら目標なんて立てないで、今日やりたい、今日やらなきゃいけないことからやるのが一番大事かなと思います」 ---------- 田幸 和歌子(たこう・わかこ) ライター 1973年長野県生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーライターに。ドラマコラム執筆や著名人インタビュー多数。エンタメ、医療、教育の取材も。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など ----------
ライター 田幸 和歌子