円安の日本経済への影響、「一概にマイナスと言えず」-日銀総裁
(ブルームバーグ): 日本銀行の植田和男総裁は17日、円安進行の日本経済への影響について、グローバル企業などの雇用者所得へのプラス効果もあり、必ずしもマイナス面ばかりではないとの見解を示した。衆院財務金融委員会で答弁した。
植田総裁は、円安は輸入物価上昇というマイナス効果がある一方、インバウンド(訪日外国人)消費を含む輸出増やグローバル企業を中心とした企業収益に好影響を及ぼす面もあり、「一概に円安が経済にマイナスと言い切ることもできない」と語った。
実質賃金下落の大きな要因はインフレ進行によるものであり、輸入物価上昇に円安が効いているのは事実としたが、インバウンドに関連した中小企業も含めて、円安が企業収益や雇用を引き上げ、雇用者所得に好影響を与える可能性を指摘。「足元の実質所得低下のほとんどが円安の影響ということではない」との認識を示した。
物価上昇圧力が続く中、内外金利差などを背景とした円安進行が輸入物価上昇を通じて家計を圧迫している。総裁は食料品や日用品の値上げによる低所得者層を中心とした家計負担への理解を示しながらも、円安の功罪を説明することで為替相場に直接働き掛けるような金融政策運営を行わない方針を改めて明確にした。
物価目標達成見通せず
総裁は金融政策運営に関しては、「イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の枠組みの下で、粘り強く金融緩和を継続することで経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えていく方針」を改めて表明した。
消費者物価の基調的上昇率は、2025年度にかけて2%物価目標に向けて徐々に高まると説明。その際に必要な「賃金と物価の好循環が強まっていくかどうかに関する不確実性が大きく、現時点では物価安定目標の持続的・安定的な実現を十分な確度をもって見通せる状況にはなお至っていない」と語った。
日銀の金融緩和継続と政府の総合経済対策との整合性を問われたのに対しては、両者の間で物価情勢に対する基本的な見方や目指している方向性は「一致していると認識している」と述べた。