向かい風で初の「10秒0」台、東洋大・柳田大輝が日本インカレ100mV パリオリンピックでの「一番悔しい思い」乗り越え
「土江先生に何の恩返しもできていない。そろそろ形にしたい」
今季は「間違いなく陸上人生で一番悔しい思いをした」。春先に海外レースで10秒02の好記録を出しながら、6月の日本選手権は3位。パリオリンピックで100mの代表権をつかむことはできなかった。 苦難は続いた。400mリレーの2走で主力級の活躍を期待されたが、オリンピック本番では予選の走りがふるわなかった。日本が5位入賞した決勝はメンバーから外れた。 決勝のレースをスタンドで見るのは、補欠だった2021年東京オリンピックと同じ。ただ、トップ選手の一人として迎えたこの夏の悔しさは、当時と比べものにならなかった。パリのサブトラックでは涙を浮かべた。 「あんな経験はどこへ行ってもしたことがなかった。ただ、決勝でメンバーを代えられるという経験をオリンピックでできるということ自体、なかなかないことだと思う」 日本インカレはオリンピック後、初めての個人のレースだった。「再出発」と意気込み、悪いイメージを断ち切りたいと臨んでいた。 今季の悔しさは「良い経験だった」とすぐに片付けられるものではない。ただ、そうしないといけない。「土江先生に何の恩返しもできていない。そろそろ形にしたい」
来年9月の東京世界選手権を見据えて
次に見据えるのは、来年9月に東京である世界選手権だ。 「少しずつではあるけど、力はついていると思う。あとは、今日のような(向かい風の)コンディションでも世界選手権の標準記録(10秒00)を切れるぐらいの力をこの冬につけたい」 中学では走り幅跳び、高校では100mで日本一のタイトルをつかんだ。東洋大入学後も、昨年のアジア選手権優勝やブダペスト世界選手権出場など、世界を舞台に活躍してきた。 競技人生で初めてと言っていい悔しさと挫折を味わった柳田は来季、心身ともにさらにレベルアップしてトラックに戻ってくるはずだ。
第93回日本学生陸上競技対校選手権大会 男子100m決勝
9月20日@Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu(神奈川) 優勝 柳田大輝(東洋大3年)10秒09 2位 井上直紀(早稲田大3年)10秒13 3位 山本匠真(広島大4年)10秒19 4位 神戸毅裕(明治大2年)10秒26 5位 鵜澤飛羽(筑波大4年)10秒28 6位 三輪颯太(慶應義塾大4年)10秒36 7位 愛宕頼(東海大3年)10秒38 8位 大石凌功(東洋大2年)10秒42
加藤秀彬