熊本駅ビル、コロナ禍も入館者目標下げず JR九州・青柳俊彦社長
新型コロナウイルスの感染拡大で本業の鉄道が打撃を受けたJR九州。青柳俊彦社長にとって、熊本県内ではことし、予定通り4月に熊本駅ビル(熊本市)を開業させる一方で、昨年7月の豪雨で被災した肥薩線をどうするかという課題と本格的に向き合う年になる。(聞き手・宮崎達也) -昨年は大変な1年になりました。 「新型コロナウイルスの拡大で“人流”が蒸発したと感じた。人が動かなくなるということがどういうことか思い知らされた」 -経営への打撃も相当なものでした。 「運賃収入の激減で昨年のゴールデンウイークは前年同期比95%減という時もあった。このままでは会社がなくなってしまうと思い、銀行から1千億円の緊急融資を受けるなどして当面の資金を確保した」 「今後、急激な回復は難しいと考えている。ワクチンや特効薬の開発が感染拡大への大きな対策となるだろうが、経済や人の流れが元に戻るまでには精神的な要素が大きいので時間がかかるのではないか」
-そうした中、4月に熊本駅ビルが開業します。 「鉄道事業のみならず、ほかに手掛けている事業についても体質の見直しをやっていかないと思っているが、熊本駅ビルのオープンのように、決めていることについてはきちっと実現していく」 「入館者数などの見込みは公表していないが、コロナがあろうがなかろうが目標は引き下げず、100%達成することを前提に頑張りたい」 -豪雨で被災した肥薩線は復旧の見通しが立っていません。 「本年度中に球磨川の治水対策がまとまると聞いているので、それを受けて復旧費を算出し、会社としての考え方を整理する。復旧するのであれば、資金の確保や再建後の路線維持策をきちっと検討した上で方針を出さないといけない」 -昨年、在来線の線区別収支を初めて公表し、ほとんどの路線が赤字でした。 「ローカル線は赤字をやりくりしながら維持している。『10年後には難しいですよ』と言わざるを得ない。地元自治体や利用者にとって、いきなり赤字と言われても困ると思うが、厳しい現状を把握していただきたい」
「赤字をどう補っていくか、地元の人と事業者の双方で解決していかなければならない課題だ。一方的に当社が『赤字だからやめます』と押し付けるのは無責任だと思っている。継続的に運行していくための策を一緒に議論していく」