褒めたつもりでも傷つけてしまう…見えない差別「マイクロアグレッション」の実態
普段の生活のなかで見過ごされやすい差別的な言動を指す「マイクロアグレッション」。 言った本人には加害の意識がないことも多いと言われます。誰もが加害者側になりうる身近な問題である一方で、相手には深刻な心的ダメージを与える危険性も。 【写真】違いを認め合う社会へ!偉人が残した多様性にまつわる名言集 今回お話を聞いたのは、『10代から知っておきたい あなたを閉じこめる「ずるい言葉」』の著者で、クィア・スタディーズを専門にする社会学者・森山至貴先生。マイクロアグレッションについて、そもそもの定義などの基礎知識からコミュニケーションで気をつけるべきポイントまで伺いました。 今回お話を伺ったのは… 社会学者 森山至貴先生 1982年神奈川県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻(相関社会科学コース)博士課程単位取得満期退学。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻助教、早稲田大学文学学術院専任講師を経て、現在、同准教授。専門は社会学、クィア・スタディーズ。
マイクロアグレッションとは
そもそも、「マイクロアグレッション」とはどういったことを指すのでしょうか。森山先生は次のように定義します。 「マイクロアグレッションは差別の一種で、障がい者、高齢者、女性、セクシュアルマイノリティや人種・民族的少数者など、社会のマイノリティに対して向けられる偏見や先入観が些細に見える言動として現れたものを主に指します。言った本人に差別や排除の自覚がないことも多いです」 「『マイクロ(小さい)』という言葉がついていることの意味を正しく理解することが重要」と先生。これは、言われた側・された側の「ダメージの小ささ」ではなく、「見えなさ/気づきづらさ」を強調する意味があるそう。 「日常のコミュニケーションのなかで起こりやすいがゆえに見過ごされがちですが、受け手には重大な悪影響を及ぼします」 マイクロアグレッションという言葉は「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」の現れと語られることが多いけれど、厳密には言動だけでなく、マイノリティを傷つける環境のあり方もマイクロアグレッションの定義に含まれるのだとか。 ただし「マイクロアグレッションが議論される際に無意識の発言・行動がクローズアップされやすい側面がある」と先生は指摘します。 「差別は『特定の人たちに対する明確な差別意識をもっている人がすること』というイメージに対して、『自分は差別なんかしない』と思っている人も行動としてやってしまいかねないものなんだと説明するときによく取り上げられるのが『マイクロアグレッション』。 そして、このマイクロアグレッションの背後にある、本人が気づいていない偏見について問題化するのが『アンコンシャス・バイアス』という言葉です」