異端の禅僧、理想に突き進む姿描く…「愚道一休」作家・木下昌輝さんに聞く
暴力と不条理が渦巻く世界で、禅は人を幸せにするか。自分は何者か。
一休の詩集「狂雲集」には、あでやかな作品が残る。社会の底辺を生きる遊女や芸能者と親しみ、即興的な歌のかけあい、ジャズのようなセッションの中で悟りを得る場面が美しい。
執筆中は「お坊さんの話を聞き、考えることで、自分をカウンセリングして救っている感じがあった」と話す。一休に通じる生きづらさは、自身にもあるのだが「嫉妬する自分、ゆがんだ自分も含めて、好きになりたいと思う」。
刊行後、取材でお世話になった道場の老師から「良かった」との手紙をもらった。「一休そのものが公案のような存在。透過（合格）ではなくとも、良いところまで行けたんじゃないか。ようやく、そう思えた」と笑顔を見せた。
