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不在配送問題をAIで解消--佐川急便ら、スマートメーターのデータ活用

配信

ZDNet Japan

 日本データサイエンス研究所(JDSC)と佐川急便、東京大学は、人工知能(AI)と電力データを用いて不在配送問題を解消する共同研究を進めてきた。7月9日、新たに横須賀市とグリッドデータバンク・ラボ(GDBL)が参画することが発表された。今後は5者共同でこの問題に取り組む。2020年9月を目処に横須賀市内でフィールド実証実験を開始する予定。  そもそもの発端について、JDSC 最高経営責任者(CEO)の加藤エルテス聡志氏は「東京大学とJDSCが“電力メーターのデータを用いて社会課題を解決できないか”という着想から始まった取り組みが特許として認められ、大規模な社会実験にまで歩みを進められた」と説明。参画各者については「佐川急便は物流のリーディングプレイヤー」「横須賀市はたいへん先進的な自治体」「GDBLは電力データを活用して価値を創造する上でのキープレイヤー」「東京大学は日本最先端の研究機関」と紹介。このチームによって「大きな社会価値を創造していきたい」と語った。  なお、こうした実証実験は世界でも初めてだといい、東京大学 大学院情報学環 教授の塚越登氏はこの5者の組み合わせについて「日本最強チーム」と評している。  物流企業として参加する佐川急便 代表取締役社長の本村正秀氏は今回の取り組みについて「物流業界の課題である“トラックドライバー不足の解消”“労働環境改善”“走行距離短縮によるCO2(二酸化炭素)排出量削減”などを解決できる画期的なソリューションだと考えている」と語った。また同氏は、新型コロナウイルスの影響による“巣ごもり消費”もあって、昨今の個人宛荷物の配送量が「年末の繁忙期並みに増加した」ものの、「外出自粛/在宅勤務によって一時的に在宅率が向上し、配送業務の効率が大きく好転し、集配の混乱にまでは至らなかった」という状況を紹介。しかし最近では「緊急事態宣言の解除後は徐々に在宅率が低下し、不在による再配達の増加が懸念される状況になっている」と指摘した。  システムの基本的な考え方は、協力家庭の各戸から得た電力データを使って不在かどうかを判断することにあるが、電力データを単純にチェックして「在宅か不在か」という判定をするわけではなく、荷物が到着する予定時刻に在宅か不在かを推測するためにAIによる学習成果が使われる。また、各戸が在宅か不在かというデータを生成するのではなく、アルゴリズムによって最適化された周回ルートの候補を提示するようになっている。配送を担当するドライバーが指示された順路に従って巡回すれば、各戸に到着した時点で在宅している可能性が高まる、というものだ。  なお、こうした処理が可能になった背景としてGDBLのチーフディレクターの平井崇夫氏は「これまでは統計データといってある地域ごとにまとめられたデータを使っており、一軒一軒のデータは使っていなかった。これは法律の制約によって電気事業で得たデータを他の目的へ使えないことになっていたが、6月に法改正があり本人同意の下で、一軒一軒のデータもさまざまな社会課題の解決に使えるようになった」と説明した。  以前の“個人情報等を安全に厳重に保持する”という考え方から“適切な保護手段を施しつつ、有効に活用する”という方向への転換を支援する法整備が行われ、情報銀行の実現に向けた取り組みなども動き出している。今回の実証実験に関しても、大きくはこうした情報活用に向けた流れの一環と位置付けられるだろう。また、「不在配送の解消は単に物流事業者にとってだけではなく、労働環境の改善や大気汚染の軽減、渋滞解消など、社会全体にメリットをもたらす」(本村氏)と期待されており、実用化に向けた取り組みに期待がかかる。

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