「子どもには新しい経験を!」親の願望に潜むワナ 発達障害の臨床医が教える「逆説的子育て論」
精神科医として30年以上、発達障害の診療と研究に携わってきた本田秀夫氏の最新刊『マンガでわかる 発達障害の子どもたち』(マンガ・フクチマミ)。同書では「発達障害」、なかでも「自閉スペクトラム」の特性がある子どもたちへの対応法について解説しています。 【画像】『マンガでわかる 発達障害の子どもたち』 前回は「自閉スペクトラム」の特性や「苦手なことでも“少しずつ”の方針はうまくいかない」理由をお伝えしてきました。今回は、子どもには「無理に新しい経験をさせない」という逆説的な子育て論をお届けしていきます。
■園に行くとき、いつも同じ道を通りたがる子 ■「いつもと同じ」が楽という感覚 自閉スペクトラムの特性がある子には、このマンガのように「いつもと同じ」であることへのこだわりが見られる場合があります。親としては、「どうしてこんなに抵抗するんだろう」と思うかもしれません。 でも、誰にでも「いつもと同じ」であるほうが楽だという感覚はありますよね。例えばパジャマのズボンのように、どちらが前なのかが一目ではわかりにくい衣類を身につけるときには、前うしろを逆に着てしまうことがあります。それでは生活ができないというわけではありませんが、やはり前うしろが逆になっていたら違和感があり、穿き直します。これも「いつもと同じ」を好むことのひとつの例です。
衣類の前うしろには多くの人が違和感を持つと思いますが、そのような感覚をもっと多くの場面で持つ人もいます。例えば、家具の配置が変わるとモヤモヤする人もいます。 自閉スペクトラムの特性がある人は、変化に対する違和感が多くの人よりも強いことがあります。その場合、変化の多い生活をしていて、従来どおりではない出来事ばかりが続くと、心身ともに疲れてしまいがちです。 幼稚園に通っていれば、毎日同じスケジュール、同じメンバーで過ごせるというわけではないでしょう。子どもはいろいろな場面で、新しい体験をしているはずです。それは変化が苦手な子にとっては、気持ちが忙しくなってしまう日々かもしれません。