ラグビーコラム 表彰式から主将が消えた!? 花園切符をつかんだ兵庫県予選決勝 思い出すあの場面と名曲
【ノーサイドの精神】第104回全国高校ラグビー大会が12月27日に開幕する。今年も全国各地の予選を勝ち抜いた51校が熱い闘いを繰り広げることだろう。 その予選でこんなことがあった。11月16日、報徳学園が関西学院に36-8で勝ち、9大会連続50度目の花園出場を決めた兵庫県予選決勝(神戸ユニバー記念競技場)のことだ。 その表彰式、直前までテレビ局のインタビューを受けていたNO・8西本龍太主将(3年)が突然、姿を消した。チームを代表として賞状は副将のFBタウファ悦幸(3年)が受け取った。整列する選手たちの中にも、その姿はない。 なぜ? このとき、西本主将はチームメイトから離れ、そそくさと着替えをすませ、志望する関西大学Aリーグ所属の大学の推薦入試会場に向かっていたのだ。会場には夕方、試験開始の30分前に到着。1人だけの試験を受け、見事、合格を果たした。大学側が決勝戦と日程が重なる事情を考慮し、試験の開始時間を特別に遅らせてくれたという。 西本主将は「負けたら終わりの試合。(同級生の)3年生が頑張ってくれていたし、決勝には出たかった」と感謝。その思いを形にするように体を張ったプレーでチームを引っ張り、花園に導いた。「(大学も決まり)あとはラグビーだけ。集中して頑張れる」と本番へ闘志を燃やしている。 こんな話を聞くと、あの場面を思い出すラグビーファンもいるだろう。 大分舞鶴と天理(奈良)が戦った1984年1月7日の第63回全国高校ラグビー大会決勝。本来ならば、大分舞鶴FB福浦孝二主将はこの決勝戦に出場できないはずだった。志望する鹿屋体育大の推薦入試日と重なっていたからだ。福浦主将は5日の準決勝終了後、大学がある鹿児島に向かうため、チームを離れている。 だが、「主将を試合に」とのファンの声もあり、大学側がこうした事情に配慮。特例措置として試験時間の繰り上げを決め、試合当日の午前6時から福浦主将のためだけに小論文、実技、面接の試験を実施。試験を終えた福浦主将は、急いで鹿児島空港から大阪への飛行機に飛び乗り、試合に出場することができた―という話だ。 この話を、そのゲーム展開がさらにドラマチックにした。