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講談師・神田伯山 「YouTubeは配信者の本質が問われる」

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NEWS ポストセブン

 コロナ騒動により、さまざまな伝統芸能の公演も自粛を迫られた。当然、講談師である神田伯山もその影響を受けた。そうした状況下での奮闘を、ノンフィクションライターの中村計氏がレポートする。

 * * *  複雑な心境だった。

「本音の本音を言うと、お客様のことがずっと心配でしたね」

 そう吐露するのは講談師の神田伯山(37)だ。2月11日、神田松之丞改め六代目神田伯山にとって人生最大のイベント「真打昇進襲名披露興行」がスタート。ところが、人類史上、未曽有といっていいウイルス禍と重なった。都内4か所で計39日間行われる予定だったが、3月10日、29日目で打ち切りとなった。

「興行を続行するか否かは、自分では決められない。誰かが感染したらどうしようと綱渡りの気分でしたね」

 そんな中、定席と呼ばれる都内の寄席は営業を続けていた。寄席は東日本大震災においても数日しか休まなかった。「来て下さるお客様が1人でもいる限り開ける」というのが信条だ。幸い寄席では、誰も感染しなかった。緊急事態宣言を受け、4月上旬、ついに休演を決めた。同時に芸人たちは居場所を失った。伯山は言う。

「それまでは一日3、4席やっていたのに、毎日、何もやらなくなった。あっという間に講談師の日常が失われました」

 ところがそんな期間であったにもかかわらず、伯山の名前は停滞するどころか一気に跳ねた。伯山の妻であり、制作会社社長でもある古舘理沙の発案で2月から始めたユーチューブ「伯山ティービィー」のお陰だった。登録者数は現在、約13万人。ユニークユーザーは129万人にのぼる。

 披露興行中は毎日、舞台裏を撮影した動画を更新し、大好評を得た。その後も「オンライン釈場」など新しい試みを次々と展開している。それらが評価され、先日、「ギャラクシー賞テレビ部門・フロンティア賞」を受賞。ユーチューブとしては初の快挙でもあった。

「ユーチューブって、最初は落ち目の芸人がやるものだと思っていた。でも始めてみたら、いろいろな発見があった。今後はコロナが収束しても、芸人個々が配信媒体を持つ時代に突入するんじゃないですかね。ただ、ユーチューブはテレビやラジオより自由なぶん、その芸人に本当に伝えたいものがあるのかないのかが如実に現れる。意外にその人の本質が問われるメディアかもしれません」

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