<クールジャパン>ポップカルチャー支援に税金を投入すべきか
安倍政権が推進に意欲を示す「クール・ジャパン戦略」。政府のクールジャパン推進会議では、国がいかに支援するかについて議論されています。しかし、ポップカルチャー支援への税金投入そのものには、賛否の声も出ています。
アニメや日本食は民間の力で広まった
これまで、アニメやマンガ、TVゲームなど日本発のポップカルチャーは、民間主導で海外進出を果たしてきました。 たとえばアメリカで大ヒットした「ポケモン」。米国任天堂は5000万ドル(約51億円)規模の大々的なキャンペーンを行ったほか、登場人物の名前をアメリカ風に変えたり、おにぎりを食べるシーンをカットするなど、徹底したローカライズ(現地化)を行いました(アン・アリスン「菊とポケモン」)。華々しい成功の裏には、こうした綿密なマーケティングがあったことは見逃せません。 日本食の分野では、草の根からブームが起こりましたが、ここでもローカライズが重要な役割を果たしました。アボカドなどを裏巻きした寿司「カリフォルニア・ロール」など、海外で独自のメニューが生まれたことはよく知られています。また、日本食の人気が高まるにつれ、数多くの外国人が日本料理店経営に関わるようになりました。そのうちのひとつ、英国生まれの回転寿司チェーン「YO! Sushi」は、世界7カ国で77店舗を展開するまでに成長しています。 政府の支援策が海外の反発を受けたこともあります。2006年、農林水産省は正統な日本食を提供する海外のレストランを支援する目的で、「海外日本食レストラン認証制度」の立ち上げを検討しました。しかし、一部の海外メディアは、食の多様性を認めない考え方だとして、これを批判。ワシントン・ポスト紙は「スシ・ポリスが彼らのやり方だ」と揶揄しました(2006年11月24日)。結局、農林水産省は政府による認証を取り止め、NPO法人が推奨マークを与える方法に切り替えました。 ローカライズを認めるか、あくまで「正統な」日本文化にこだわるか。そして、民間の力で世界を切り開くべきか、政府が果たすべき役割はあるのか。識者の意見も割れています。