EV市場の6割を握る中国、いまや気候変動対策で途上国をまとめ上げる存在に、腰が引けっぱなしの先進国
(国際ジャーナリスト・木村正人) ■ 中国の新興EVメーカーが現地パートナーと調印 【写真】「中国版テスラ」とも称される中国のEVメーカー「NIO」の共同創設者兼CEOの李斌氏 [バクー発]アゼルバイジャンの首都バクーで開かれている国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)のフォーラムで、中国の新興EV(電気自動車)メーカーの蔚来汽車(NIO)と現地のパートナー企業グリーンカーとが戦略的協力協定に調印した。 NIOは来年第2四半期からアゼルバイジャンで正式に事業を開始し、現地のユーザーに機能性・接続性・ユーザー体験を向上させる先進技術を組み込んだスマートEVとサービスを提供する。調印式にはCOP29中国代表団団長で中国生態環境部の趙英民副部長も出席した。 一貫したグローバルなユーザー体験を保証するため、NIOのガイドラインに基づき、グリーンカーは現地で製品やサービスの提供を開始し、充電・交換施設、サービスセンター、NIOハウスを含む現地販売・サービスネットワークを構築するという。 NIO共同創設者兼社長の秦力洪氏は「現地での新エネルギー車の普及に貢献し、当社のグローバル化を加速させる」と意気込む。NIOは2014年に設立され、ノルウェー、ドイツ、オランダ、スウェーデン、デンマーク、アラブ首長国連邦(UAE)で合計62万台を販売する。
■ 昨年、中国は世界のEVの6割弱を製造 国際エネルギー機関(IEA)は昨年、世界全体で約1400万台の電気自動車(EV)が新規登録されたと報告している。60%弱が中国、25%弱が欧州、10%が米国で、合計すると世界のEV販売台数の95%近い。道路を走行するEVの総数は4050万台に達した。日本は「蚊帳の外」状態だ。 国連貿易開発会議(UNCTAD)の報告書「不満の時代における開発再考」によると、中国は交通の未来と気候変動対策にとって重要な自動車産業の支配的プレーヤーとしての地位を固めている。中国の台頭は自動車生産、世界の貿易と投資の地理的な変化を如実に物語る。 世界の自動車産業は国際分業の縮図であり、貿易統合の最も象徴的な指標の一つだという。米国のデトロイト、ドイツのシュトゥットガルト、日本の名古屋を拠点にしていた自動車生産は貿易上有利な人件費の安い低コストの地域に移ってきた。 1980年代にはメキシコ、韓国、スペイン、90年代はチェコ、スロバキア、タイ、2000年代はブラジル、インドネシア、モロッコに生産拠点が移された。しかし自動車生産は今や多くの途上国や一部の先進国にとって手が届かぬ高嶺の花となっている。