トラック運転手のオアシス「トラックステーション」閉鎖相次ぐ ネット通販需要&ユーチューバー熱視線も、一体なぜなのか
最初のTSは1976年にオープン
皆さんは、トラックステーション(以下TS)をご存じだろうか。TSとはトラックドライバーの休憩や宿泊、情報収集などのための施設で、飲食施設、簡易宿泊施設・仮眠施設、コンビニ、コインシャワー、コインランドリー、休憩所、自動販売機、トイレ、駐車場、情報提供施設などから構成される。 【一目瞭然!】全国の「トラックステーション」を見る(12枚) 1976(昭和51)年に最初のTSがオープンして以来、全国の主要国道沿いに開発が進展した。現在は北海道の札幌TSから大分県の大分TSまで25施設が営業している。高度経済成長期には国内の物流が一気に拡大し、長距離トラックがその物流の担い手となっていった。 しかし、国内を縦断する長距離運転は過重な労働である。トラックドライバーの労働環境の改善を図るためには休憩施設などの環境整備が必要であるとされ、 ・営業用トラックの輸送力の確保 ・輸送サービスの改善 ・安全運行の確保 などに資するために創設された運輸事業振興助成交付金による事業として整備が推進された。 TSは全日本トラック協会が運営している。TS内の施設の利用は協会員であるトラックドライバーが優先だが、すいていれば飲食店など一般の人が利用することもできる。なかには、ラーメンチェーン店を展開するゆにろーず(茨城県取手市)のガッツリ系人気ラーメン店「にんたまラーメン」が入居しているTSもある。 同店は2006(平成18)年に茨城TSに出店したところ、トラックドライバーの人気が非常に高く、トラック協会からの要請で他のTSにも入店することになった。テレビ番組でも取り上げられ、大食いYouTuberがデカ盛りチャレンジをしている。 また、そのほかのTSにある食堂はトラックドライバー対象だけあってボリュームがあり、昭和っぽさが何か懐かしくもある社員食堂のようなメニューになっている。朝食ビュッフェを実施しているところもある。
施設老朽化で近年閉鎖相次ぐ
そのTSだが、2010年代後半ごろから閉鎖する施設が相次いでいる。また、施設を縮小したり、年中無休から休日を設けるようになったり、営業時間を短縮したりするなど、事業を縮小する傾向が見られる。 閉鎖は施設の老朽化によるものが多い。そのほかに、開発当時と比べてTS以外にもトラックドライバーが休憩・宿泊できる機能が拡充されてきたこともある。現在はコンビニが普及して、高速道路のサービスエリア(SA)にも休憩スペースや安価な宿泊施設、コインシャワーなどが付帯されている。 さらに、携帯電話の普及などによって情報の入手も容易になっていることから、TSの必要性はうすらいでいると言われている。しかし、休憩所の不足を訴える声はあちこちで上がっている。 近年、国内経済は停滞しているものの、ネットでの売買の活発化、海外大手ECの日本参入などで、むしろ物流が活発化している。さらに、今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって、外出せずに購入できるECが幅広い層に浸透し、コロナ収束後も拡大すると見られている。 それに伴い、物流の拡大も継続すると言えるだろう。しかし、その物流を担うトラックドライバーは慢性的な人手不足にあり、さらに若い担い手が少なく、ドライバーの高齢化が言われている。業界では「ホワイト物流」(ブラックではないということか?)と名付けて労働環境の改善を目指しており、高齢者や女性でも働きやすい環境を構築するとしている。では、TSの代わりはどうなるのだろうか?