内田也哉子さんが立命館大で対話…戦没学生の作品「かわいそうな人の絵でなく、純粋に対面して」
戦没した画学生の作品を集めた美術館「無言館」(長野県上田市)の共同館主で、エッセイストの内田也哉子さんが5日、同館の作品を常設展示する立命館大国際平和ミュージアム(京都市北区)を訪れ、学生らと対話した。(矢沢寛茂) 【図表】京都市
無言館は作家の窪島誠一郎さん(83)が1997年に開設し、全国の遺族から集めた約130人分の遺作など約700点を所蔵。同ミュージアム内には「無言館京都館」がある。
内田さんは今年6月に無言館の共同館主に就任。今回は「絵は読むもの?」をテーマに、収蔵作品から純粋に好きだと感じた5点を選び、作者や題名、描かれた経緯などを伏せて1点ずつスライドで提示した。参加者は「モデルとの親密さが感じられる」「暗い苦しい時代に理想の姿を重ねたのでは」といった感想を述べた。
その後、内田さんは出征前にモデルとなった妹や弟らの回想などを交え、より詳しく紹介した。「彼らの絵は、目の前にあるものを描くという生命にあふれている。(戦死した)かわいそうな人の絵でなく、純粋に対面すれば、どんなに彼らも喜ぶか」と述べた。
内田さんは「戦争や平和といった遠大なテーマになりやすいが、鑑賞には正解も不正解もない」とし、「等身大のリアリティーや豊かさ、力強さを感じ、対話を通じて別の視点が加わると、作品の魅力が深まる」と話した。
戦渦の絶えない現在の世界情勢に照らしつつ、「芸術を入り口にして、戦争を知らない世代がより身近に感じる手伝いをしたい」と抱負を語った。