【毎日書評】いつも時間が足りない人へ。知的生産性をあげる「夜時間」の使い方
新型コロナウイルス感染拡大の影響などにより、この数年で働き方や生活様式が大きく見なおされることになりました。たとえば象徴的なのが、必ずしも通勤する必要がなくなり、自宅で過ごす時間が増えたこと。 朝や夕方、夜に使える“自分の時間”が増えたわけで、その時間をいかに使うべきかが大きな意味を持つようになったわけです。しかも“どう使うか”は、これからの人生を左右することになる可能性すらあります。 そこで「夜の時間」を活用しようと提案しているのは、『頭のいい人の夜に学ぶ習慣』(齋藤 孝 著、ポプラ新書)の著者。 あなたが持っている24時間のうち、自由で静かな「夜の時間」の重要性は増すばかりです。 そして、「夜の時間」にできることも格段に増えています。得られる情報も膨大になりました。何にフォーカスするのか、ということも明確な意志をもって選択しなくてはなりません。(「新版に寄せて これまでにない『夜に時代』をどう生きるか」より) 2017年に『夜型人間のための知的生産術』というタイトルで刊行された書籍の新版。ここでは、典型的な「夜型人間」だという著者自身の夜の活かし方、過ごし方、習慣が新たに書き加えられています。 さらに、現代の「夜に学ぶ人」「夜の時間を大切にする人」「静かな時を味わいたい人」の生活の参考になる内容を意識しながら修正を進めたのだそうです。 きょうは、いまの著者にとって夜とはどんな時間なのか、そして「夜に学ぶ」意味についての考え方が記された新章「『夜』とはどんな時間なのか」のなかから、基本的な考え方を抜き出してみたいと思います。
「夜」とはどんな時間なのか
日が落ちて夜になると、静かな時間が訪れます。著者が着目しているのは、そんな、当たり前な日常としての夜のありかた。 多くの人は昼間に仕事や勉強をし、夜に体を休めます。そうした活動量の違いも昼と夜とを隔てています。 そして、私にとって夜の中でもとくに、眠りにつく前の2時間は、新しいことを知り、学びを深め、人生を充実させるために不可欠な時間です。 もちろん、ほかの時間帯でも学びを深めることはできます。しかし、夜のその時間帯が最適です。 なぜなら、一人で過ごす自由度が最も高い時間帯だからです。(34ページより) なるほど日中は、会社、仕事の関係者や友人とのコミュニケーションが断続的に続くことになるでしょう。また、スマホやパソコンにもひっきりなしに連絡が入るため、それらへの対応も必要です。そのうえSNSも気になってしまうため、物理的にも精神的にも、落ち着いてなにかに取り組むことが難しいわけです。 一方で夜、それも、帰宅してから寝るまでの間の時間は、外部の人とのリアルなコミュニケーションは発生しません。スマホには相変わらず連絡が入り続けるかもしれませんが、勇気を出してそれに返事をしないことはできます。遅い時間でしたら、すでに寝ていたことにすればいいでしょう。(35ページより) 家族がいたとしても同じ。帰宅後には家族との時間も必要でしょうが、寝る直前までひとりになれないわけではないはずです。たとえば寝る前の1~2時間など、ひとりきりで過ごせる時間もきっとあるのです。 つまり、そういった貴重な時間を、自分のために使うことを著者は提案しているわけです。暗くてひっそりと静かな時間帯である夜は、誰からも邪魔されることのない、ひとりを充分に満喫できる時間だからです。(34ページより)