西松屋が「次のワークマン」になれる理由
昨年、小売業界で最も注目を集めた企業はワークマンだろう。 ガテン系ワーカーをターゲットにした作業着中心の専門店だったが、機能性の高さや手ごろな価格が支持された結果、女性顧客が増加。アウトドア人気の高まりを追い風にして、2018年7~9月期から既存店売上高は四半期ベースで二桁超の増加を続けている。 【画像で見る】女子向けの「#ワークマン女子」 コロナ禍の影響でアパレル小売全般が苦戦している現在でもその勢いが衰えていない。20年7~9月の第2四半期も、既存店売上高は前年同期比14.7%増となっている。 20年3月期の営業利益は、前年比41.7%増となる191億円をたたき出している。前年の営業増益率が27.6%だったうえでの数字なので、驚異的な業績拡大を達成している。近年で最も元気な小売企業といえるだろう。 本稿のテーマは、「なぜ西松屋が次のワークマンになれるのか」だが、その前に、ワークマンとしまむらがブレークした背景を振り返ってみよう。
一般には無名でも小売業界では有名だったワークマン
近年の“ワークマンブーム“によって知名度が高まっているが、もともとは優れた流通企業として小売業界では知られた存在であった。 ブーム前の18年3月末の時点で、すでに821店もの店舗網を全国展開するチェーンストアであった。繊研新聞社が集計した18年度末のアパレル専門店の店舗数ランキングで、国内8位に位置していた。
女性客には色気を見せずに徹底して運営改善を図っていた
筆者は現在のブームが起きる前、決算説明会で栗山清治前社長の話を何度も聞いた。事業展開を説明する中で、客層を広げたいという発言はしていたが、「女性にファッション性でも訴求するんだ」という趣旨の話を聞いた記憶はない。 ワーカー向けのお店として、限られたニッチなターゲットを狙っていた。ニッチゆえに、大きな売り上げが期待できない。そのため、少ない売り上げでも利益を残せるだけの自社ブランドでの商品展開による値入改善(売り上げから原価を引いた残りである“粗利”率をアップさせること)や、少人数での店舗運営を行うためのオペレーション効率化を推進。そして、ムダを省く商品管理のシステム改善などを徹底的に行う、まさに優れたチェーン企業そのものだった。