あの人たちが選ぶ「食」を考えるための映像作品7選──7 Watch Docs on Food Sustainability
食品ロスや安全性、畜産業の裏側など、食への向き合い方を変えるキッカケとなる映画やドキュメンタリーを紹介。アクティビストからラッパー、DJまで、それぞれのオススメを訊いた。 【写真を見る】そのほかの「食」を考えるための映像作品はこちら!
100億人─ 私達は何を食べるのか?(柄澤 結|Rose Studio マネージャー)
2050年までに地球の人口は100億人を超え、すでに足りない食料はさらに足りなくなるという。そんな未来の食糧事情をさまざまな人にインタビューする作品。食料を増やすという名目で登場するのは、抗生物質を打たれ大量に生産されるチキン、アフリカの農家の土地を奪う大企業、培養肉、先物取引と世界的投資家のジム・ロジャーズ……。お金の匂いでむせ返りそうになりながらも、ラストに登場するイギリスのゲリラ園芸家に私は心打たれてしまいました。彼女たちは自分の街のすべての植込みに食べられる植物を植え、地域の人々(警察官も!)と一緒に育てている。2015年の作品ですが、当時と今で状況が進展していないことに気づかされながらも、たくさんのヒントをもらえる映画です。
ゲームチェンジャー: スポーツ栄養学の真実(Mars89|DJ/コンポーザー)
とある格闘家が怪我から早く回復する方法を探す過程で菜食主義になるという話。同じく格闘技をやっていて、なおかつ菜食中心の食生活をしている者として、この作品にエンパワーメントされました。なかでも興味深かったのが、強さや逞しさといった前時代的な「男らしさ」と肉食を結びつけたのは、ミートインダストリーが展開したキャンペーンであり、タバコを健康的と謳っていたさらに前の時代のキャンペーンと同じ手法だというところでした。私は環境への影響を考えて菜食中心の生活にシフトしていきましたが、もしかしたら菜食は家父長制を破壊する助けにもなるかも……?
Cowspiracy: サステイナビリティ(持続可能性)の秘密(大沢伸一|音楽家)
この文章を書いている2022年3月現在でもさまざまな情報が日々更新されていて、環境問題、とくに地球温暖化に関して正直ぼくには何が正しいのかわからない。多分だれにもわからないのだとも思う。そして、それを考慮した上でも畜産業界の抱える問題の大きさに気づかされたのがこのプログラム。紆余曲折を経て現在のぼくの食生活は95%ヴィーガンに落ち着いた(約20食のうち1回は慎重に肉や魚を選んでいる)。畜産業界が巨大産業に化ける以前の食生活ってこれくらいだったのでは、と想像する。以前にも増して身体に入れる食物の安全性を考えるきっかけにもなった。
Seaspiracy: 偽りのサステイナブル漁業(Akko|料理家/ROKU Berlin)
たしか、Facebookで畜産の実態を暴く短い動画を観て私はベジタリアンになったけど、魚はたまに食べていた。コロナ禍が始まって、ケータリングの仕事がなくなり、鯛の昆布締めのちらし寿司の宅配をはじめた。その頃に私のSNS上で話題だったこの映画を観て、すぐにヴィーガン寿司に切り替えた。乱獲、犠牲、マフィアまで出てきて……。私の想像は現実にまったく追いついていなかった。2050年までに地球上生物のダイバーシティーは半分になっちゃうってほんと……? 私はこの豊かな多様性の中でわいわいと生き、死ぬときは地球の美味しい栄養になりたいと願う。