おびえていた中国人通訳が豹変 機内で交渉、月給4000円から25万円へ 話の肖像画 夢グループ創業者・石田重廣<20>
《来日後、蘇氏が仏像の輸入販売を始めた》
それでも蘇建民は優秀です。来日して半年ほどたったころでしょうか。「社長、仏像の輸入販売をやりましょう。もうかりますよ」と提案してきた。文化財ではなく、家のお仏壇に置く仏像です。仏像は素材によって値段が違うんです。一番安い檜(ひのき)から柘植(つげ)、紫檀、白檀(びゃくだん)と値段が上がっていく。3寸(約9センチ)くらいの仏像で、檜は一体1万5000円くらいなのに、柘植は40万円、白檀は150万円もする。ここに蘇建民は目をつけたわけです。
蘇建民はミャンマーから白檀を安く仕入れて、中国で腕のいい彫刻師たちに作らせて日本で売ったらどうか、と言う。いいアイデアです。で、「蘇建民、白檀と柘植でサンプルを作ってもらって。セールスに行ってみよう」となった。しばらくすると観音様や菩薩様ら大小約50体が中国から届きました。確かにすばらしい出来栄えです。
サンプルを持って、蘇建民と東京・浅草のお仏壇屋さんに営業をかけました。ご主人は「ほお、いいお顔をされている」と手応え十分です。次は値段交渉ですが、ここで僕は蘇建民という男のすごさを目の当たりにすることになりました。(聞き手 大野正利)
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