「グリーン成長戦略」で自動車の未来はどう変わるのか
2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標に向けた実行計画案「グリーン成長戦略」が明らかになった。自動車分野では乗用車の新車販売をすべて電動車にする目標だ。電気自動車(EV)は排出ガスこそゼロになるものの、電動化の軸に据えるには課題が山積している。カーボンニュートラルの実現に向けては、当面ハイブリッド車(HV)を中心に用途に応じ棲み分けていくことになるだろう。(松田慶子)
HVは新車の4割弱もEV、PHVは1%未満
2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする政府目標の実現に向け、自動車では2030年代半ばに、乗用車の新車販売を全て電動車にすることを目指す方針だ。 日本では1997年に世界初のハイブリッド車(HV)が発売されて以降、電気自動車(EV)にプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池自動車(FCV)など、各社とも様々な電動車を積極的に投入し、これらをまとめた電動化車両の割合は新車販売の4割弱を占めるようになっている。ただ内訳はHV車がほとんどで、EVとPHVは1%未満だ。 政府はこれまでもEVとPHVの新車販売での比率を2030年までに20~30%に引き上げる目標を掲げてきたが、高価格や一度の充電で走れる航続距離の問題、充電インフラの不十分さなどが普及へのハードルとなってきた。PHVは充電後もHVとして走行できるため充電インフラへの懸念はないものの、価格差のハードルは依然高い。 これに対し充電の心配がなく、ガソリン車との価格差も埋まりつつあり、車種も豊富に揃ってきたHVが、使いやすく手に届きやすい“現実解”として普及している。
電動車の電源を火力に頼ることの限界
EVは走行中の排出ガスこそゼロとなるが、モーターを駆動させる電気を作る電源は、7割以上を火力発電に頼っている。またライフサイクル全体の排出量を見ると、EVはバッテリーもふくめた製造過程でエンジン車よりも多くの電力が必要とされる。 ちなみにFCVも水素は化石燃料からの生成が中心で、生成過程で必要な電力は火力発電に頼っている。電源を火力に依存したまま車両だけ電動化しても、カーボンニュートラルへの効果は限定的となってしまう。 ちなみに、電動化のカギを握るバッテリーにはリチウム・ニッケルなど多くの鉱物資源が使われ、コバルトなど希少な金属も含まれている。原料の調達や価格面などで不安定要素が多く、グローバルでの需要増に伴い争奪戦も懸念され、原料価格の高騰は、バッテリーを通じてEVのみならず全ての電動車の価格に反映される。 希少金属の使用を減らすバッテリーの開発も進むが量産には時間がかかりそうで、また利用後に資源を取り出すリサイクルの体制整備も急務となっている。