世界で活躍するという気概を 東工大・三島学長が語る、英語スピーチの理由
大学院の授業の9割は英語に
─── 東工大の学生には、どのような英語力が求められているのですか。 英語の4技能である「読む」、「書く」、「話す」、「聞く」のうち、読む技能は4年時に英語の論文をたくさん読む際に要求されます。書く技能は論文に用いますが、起承転結の筋立てをきっちり考えて文章にしなければなりません。話す技能は国際会議で発表する時、聞く技能は質疑応答時にも使います。また、論文を読めば読むほど専門用語の語彙が増えていきます。 英会話スクールに行くことはプラスに違いありませんが、そこで良い点が取れるからといって、東工大で必要とする英語が身についたとは言えません。 ─── それが、研究者にもとめられる英語力ということですね。 ただし、日本語の技量が低いと英語もうまくなりません。自分の頭でものを考え、反芻し、論理をチェックして、文章に落とし込むことができないと。 たとえば、黒板に書かれたことをそのまま写して覚えるというやり方ではダメです。課題が与えられたときに自分の頭で考え、様々な方法で調べていろんな意見を知り、自分なりの考えをまとめる、という訓練が必要です。そのような勉強の仕方、そして教え方を浸透させるのが今度の教育改革の目指すところです。 ─── 今後、英語を公用語に採用する日本企業も増えそうです。今回の英語スピーチは、そうした日本国内の流れを意識したのでしょうか? 国内よりも、むしろ世界を意識しました。国内企業に技術者として入社しても、ずっと日本国内で働くとは限りません。日本にいても海外の技術者が来ればコミュニケーションが必要です。また、たとえば、国際規格を作る際に、英語力が乏しいために海外の人々に遅れを取ると、日本にとって不利なルールになってしまうことも十分予想されます。日本の競争力を守るためにも英語が必要です。 ─── 今後もこうした英語のスピーチの機会を設けるつもりでしょうか? ケースバイケースですが、多数の学生が集まる時に英語のスピーチを行う機会は増えると思います。 ─── 今後は学内で英語の使用を広げていきますか? 学士課程で基礎を勉強する際は、日本語できっちり頭の中で考え、学んだ方が効果的であり、授業をすべて英語にしてしまうのは、まだ時期尚早だと思っています。一方、大学院については平成30年(2018)ごろに約9割の授業を英語にします。 ─── あらためて、今回の英語スピーチについてどうお考えですか? やってよかったです。賛否両論が出るのは当たり前ですが、日本の大学の国際化が課題とされる中で、ポジティブな試みだったと私は思います。 (取材・文:具志堅浩二) 参考:東京工業大大学・三島良直学長の入学式スピーチ