「自分の体が嫌いだった」中年女性の摂食障害体験談
41歳のケイト・ムーア(偽名)は、妻として、小学生の息子2人の母として、米ノースカロライナ州の忙しい病院の外来に勤務する看護師として、他の女性と同じように多忙な日々を送っていた。 【写真】異物を食べたり、夜食べ過ぎたり…実はよくある5種類の「摂食障害」 子宮摘出術から回復したのはいいけれど、不安から来る胃腸障害に加えて、過敏性腸症候群のような症状も現れ始め、気付けば体重が4.5kgも減っていた。 「かかりつけ医に健康上、大きな問題は見られないと言われたので、そのままでいいのだろうと思いました」 大学時代の体重に戻り、褒められることも増えてきたのだとか。今回は中年女性の摂食障害についてご紹介。
そんなケイトのもとに厳しい上司がやってきた。 「仕事がストレスフルになり、やる気が出なくなりました。ただでさえ家のことで忙しいのに、仕事のスケジュールまでパンパンになったのです。不安が増して、自分が母親としても、妻としても、看護師としても、家政婦としてもダメな人間に思えてきました。 体重もますます減った。自分がキレイだともスリムだとも思ったことはなかったですし、自分の体が嫌いでした。だから、痩せて人から注目されるのが病みつきになるほどうれしく。体重が減ると、自分はダメな人間じゃない、人生のゴタゴタも何とかなると思えたんです」とケイトは当時を振り返る。 過剰なまでに体を動かし、摂取カロリーを1食あたり100kcal、1日あたり500kcalに抑えるばかりか、会食の場では「家で食べてきたから」「ちょくちょくつまんでいるから」「胃の調子が悪くて」という言い訳をした。しまいには、ひと口ごとに体脂肪が増えていくと信じ込み、食後の嘔吐が始まった。
ケイトの厳しい食事制限は、家庭の混乱を鎮めるどころか、結婚生活をギシギシさせた。彼女の体重が原因で夫婦喧嘩が勃発し、子供たちまでストレスを感じるはめに。 「息子たちには、私が食べていないことも、夫が不安で取り乱していることも分かっていました。あの子たちが『朝ごはん』といって、山盛りのシリアルと焦げたトースト、なみなみに注がれたオレンジジュースをベッドまで運んできてくれたときは、胸が張り裂けそうでした」 たった数カ月で服のサイズはXLからXSになり、動悸、極度の疲労感、低血圧症の発作、めまいなどの症状が現れ始めた。ある日、職場で意識を失ってやっと、ケイトは摂食障害の治療に乗り出す。ときどき療養施設に入りながら、夫を巻き込んだ集中的なプログラムを受け、5年かけて回復したケイトは現在56歳。ヘルシーな体重を10年以上キープしている。