「自分だけを見るな!」人前で話すことに自信がない人に向ける”他人を観察する”ことの重要性
いままで、「大切な人と深くつながるために」「いじめられている君へ」「親の期待に応えなくていい」など、10代に向けて多くのメッセージを発信してきた作家の鴻上尚史さんが「今の10代に贈る生きるヒント」を6月12日に刊行した。その書籍のタイトルは『君はどう生きるか』。昨年ジブリの映画でも話題になった90年近く前のベストセラーをもじったこのタイトル。なぜ「君たち」でなくて「君」なのか。そこには鴻上尚史の考える時代の大きな変化があった。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『君はどう生きるか』(鴻上尚史著)より抜粋して、著者がいまを生きる10代に贈るメッセージを一部紹介する。 『君はどう生きるか』連載第33回 『「絶対の保証」は存在しない──「どうしたら自信が持てますか?」…自己肯定感の低さに苦しむ人に伝えたい“真実”』より続く
話すことに自信がない人
ぼくは、オープンワークショップという「演技と表現のレッスン」を年に何回か開催しています。 先着順の申し込みなので、いろんな人が集まります。定員は30名で、プロの俳優もいれば、俳優志望の人、演劇部の顧問の先生、トーク力をつけたいビジネスパーソン、読み聞かせをしたい親などなどです。 中には、「人前でちゃんと話せる自信をつけたい」と思って参加する人もいます。 最初に全員で円形に座って、自己紹介を始めてもらいます。 この時、話すことに自信のない人は、自分の順番が来るまで、一生懸命、頭の中で「何を話そう」と考え続けます。ぶつぶつと思わず口に出してしまう人もいます。自己紹介することを事前に伝えていませんし、30人(ぼくを入れて)を前にして話すので、「恥をかきたくない」「うまくやりたい」と思うのでしょう。
自分にしか興味がない
自分の順番がきて、なんとか、頭の中でまとめた言い方で自己紹介を終えると、その後は、「ぬけがら」になってボーッとするか、「失敗した。全然ダメだった。もう死にたい」と自分を責めるか、に分かれます。 そういう人を見ると、人前でしゃべることに自信をつけるのは難しいだろうなあと思います。 この人は、30人の周りの人をチラッと見てプレッシャーを感じた後は、ずっと自分しか見てないのです。 自分しか見てない人は、とても「自意識」が強い人です。自分しか見ないようにすればするほど、「自意識」は強くなります。 残酷な言い方ですが、「自意識」の強い人は、他の人より何倍も自分だけに関心がある人です。 もちろん、みんな自分が好きです。それは当然のことです。 大勢で集合写真を撮ると、みんな、まず自分の顔を見ます。どんなに子供のことが大好きな親でも、まず自分の顔を見た後、横にいる子供の顔を見ます。 みんな、自分に関心があるのです。 それは当然のことで、悪いことではありません。ただ、自分に向ける関心の何分の一かを周りに向ければ、いろんなことに気づくのです。
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