巨人の開幕勝利を呼び込んだ恐怖の8番
■開幕戦勝利を呼び込んだ橋本の一振り 試合を決めたのは、8番バッターの一振りだった。坂本勇人のホームランで同点として、4―4のスコアのまま、5回二死一、二塁で、打席には、仙台育英から2008年のドラフト4位の橋本到。身長172センチの小兵だが、選球眼優先型の待ちのスタイルではなく、ストライクは、積極的に打ちにいく好戦型の攻めのスタイル。 能見のインハイのストレートを思い切り振り叩くと、打球は右中間へ。名手、福留は懸命に追い、最後は横跳びしたが、わずかにグラブを打球は抜けていった。決勝の2点タイムリー。新戦力、片岡やアンダーソンのホームランを呼び、最後は全員安打の巨人祭りになったが、その火をつけたのは、間違いなくプロ初スタメンとなった橋本だった。 「オープン戦と一緒です。自分をアピールするだけです」 ■激戦区だったセンターのポジション争い 早々と、その肩と守備力を買い「ライト・長野」で固定する方針を決めた原監督は、キャンプ、オープン戦を通じて、センターのポジションに競争を持ち込んだ。候補は、松本哲と、橋本と同期のドラフト1位の大田泰、そして橋本。オープン戦途中では、橋本がふがいなく連続三振すると、外野経験など皆無の内野手の藤村にセンターを守らせ、競争に刺激を与えた。 「あれは屈辱でした」。 120メートルの肩と、50メートルを6秒フラットで走る足には、元々、定評のあった橋本は、高校時代は「みちのくのイチロー」と呼ばれるほどの安打製造機で、ルーキーイヤーにフレッシュオールスターで優秀選手賞に選ばれるなどしたが、ほとんどが、1、2軍のエレベーター選手だった。 だが、本来、センスのあった打撃にパンチ力が加わり始めて、プロ6年目にして初めて開幕スタメン候補として競争に参加。原監督は、「実力至上主義」を宣言して、結果を残してセンターを奪えとハッパをかけたが、橋本は、オープン戦を通じて、打率・342の結果を残し「8番・センター」の開幕スタメンの座を手にしたのである。