京都・太秦映画村から福島県いわき市移設 美空ひばり像 「塩屋の岬」に 「みだれ髪」の地 鎮魂のシンボル
昭和を代表する歌姫美空ひばりさん(1937〈昭和12〉―1989〈平成元〉年)の等身大ブロンズ像が、福島県いわき市平薄磯の塩屋埼灯台下にある広場「雲雀乃苑(ひばりのその)」に移設され、17日に除幕される。像は30年ほど前から京都市のひばりさんをしのぶ施設に展示され、全国のファンに親しまれてきた。東日本大震災や水害に見舞われたゆかりの地で、犠牲者の鎮魂や地域の復興を願うシンボルに生まれ変わる。 像は、ひばりさん没後の30年ほど前に、京都市にあった「京都嵐山美空ひばり館」開館に合わせ、彫刻家川合敏久さんが制作。晩年のひばりさんが着物姿で胸の前に手を組み、たたずむ姿を表した。高さは等身大の153センチで、黒みかげ石の台座に乗っている。「ひばりプロダクション」が所有し、京都市の東映太秦映画村にあった記念館「京都太秦美空ひばり座」の入り口に飾られ、全国から訪れるファンを出迎えていた。施設の老朽化に伴い、記念館は今春取り壊された。
ひばりさんといわき市は長い間、縁を育んできた。1987年には大病からの復帰第1作として塩屋埼灯台を舞台とした「みだれ髪」を発表した。みだれ髪はネバーギブアップ精神を表す名曲として今も歌い継がれている。灯台の下には1988年に「みだれ髪」の歌碑、1990年に遺影碑、2003年に「永遠のひばり像」が次々と建立され、ひばりファンや灯台を訪れる観光客に親しまれてきた。 ひばりプロダクションは像の姿形が津波などで犠牲になった人々を悼んでいるように見えることから「縁深い、いわきに移すのがふさわしい」と考え、「雲雀乃苑」を管理する市に移設を打診し、了解を得た。 像は3日、歌碑と遺影碑の間に置かれ、幕がかけられている。17日午前11時から現地で除幕式を行い、ひばりさんと親交のあった近藤真彦さんや石井ふく子さん、徳光和夫さんがゲストとして出席する予定。プロダクション専務の加藤有香さん(51)は「ひばりさんは雲雀乃苑に来たがっていたが、かなわなかったので喜んでくれると思う。いわきへの移設は運命。ファンが被災地を訪れ、復興を感じるきっかけになればうれしい」と話している。