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名曲散歩/アリス『チャンピオン』モデルとなったボクサーは誰?

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SmartFLASH

 東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。 お客さん:お、このイントロはアリスの『チャンピオン』、オープニングのこの躍動感! でも最後は切ないんだよねえ……。 マスター:1978年にリリースして78万枚を売り上げたアリス最大のヒット曲ね。もともとボサノバのゆったりした曲調だったんだけど、スタジオで倍のテンポにしたら勢いがついたそうだよ。  ところで、ベテランボクサーが若い挑戦者に敗れ去る悲哀を描いたこの作品、モデルになったボクサーは、誰か知ってる? お客さん:あの頃のチャンピオンといえば、ガッツ石松、輪島功一、具志堅用高……。 マスター:実は、カシアス内藤なんだ。 お客さん:作家の沢木耕太郎が書いた『一瞬の夏』の主人公だ! マスター:そう。『一瞬の夏』は元東洋ミドル級チャンピオン、カシアス内藤のリング復帰を描いたルポルタージュの傑作ね。  実は谷村新司が沢木耕太郎と雑誌で対談した後、誘われて下北沢の金子ジムに、カシアス内藤のスパーリングを見に行ったんだって。谷村新司はなんと! その夜のうちに「チャンピオン」を書き上げたという。 お客さん:よっぽど感情を揺さぶられたんだね。 マスター:カシアス内藤はその名のとおり、カシアス・クレイ、のちのモハメド・アリから名前を拝借したほど才能にあふれたボクサーだった。 お客さん:アリが来日したときには、練習パートナーも務めていたもんな。 マスター:だけど、あと少しのところでチャンスを逃して、東洋チャンピオンに返り咲けず、1979年に引退してしまった。 お客さん:まさに『チャンピオン』の歌詞のように散ったわけだ。 マスター:カシアス内藤は、2004年に余命3カ月の咽頭ガンが発見されたんだ。でも、あえて手術せず、ガンを小さくする放射線治療を選んだところ、71歳になった今も自分のジムで後進の指導に当たっているという。 お客さん:ある意味、ガンという敵と闘っている『チャンピオン』なんだね。  おっ、次の曲は……。 文/安野智彦 『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中 参考:朝日新聞(2020年1月21日)/週刊ポスト(2013年1月1-11日号)/富澤一誠『フォーク名曲事典300曲』(ヤマハミュージックメディア)

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