「天皇」という称号はそもそもいつかあるのだろうか?なぜ戸籍や氏姓・名字がないのだろうか?
日本国民が生まれながらにして仰ぐ天皇と皇室とは、一体どのような存在なのか。起源、歴史、制度、役割などシンプルな疑問に迫る。 ■7世紀頃から君主号として採用された「天皇」 「天皇」の称号が成立した時期は、推古天皇朝(7世紀前半)か天武天皇朝(7世紀後半)で議論が分かれる。平成10年(1998)に奈良県明日香村の飛鳥池遺跡から、天武天皇朝のものとされる「天皇」木簡が出土し、7世紀後半成立説が有力となった。しかし近年では、「天皇」の文字がある野中寺弥勒菩薩像銘が天智天皇5年(666)のものと認められ、7世紀前半成立説が再注目されている。 「天皇」の意味としては、中国の「皇帝」に匹敵する君主号としての意味が大きい。また和訓のスメラミコトは、澄める(清浄)あるいは統べる(統合)役割をもつ尊者(ミコト)の意味がある。天皇号の採用には、中国に匹敵する中央集権国家を目指す意図があった。 ■皇族に戸籍や氏姓・名字がないのはなぜ? 日本における氏・姓は、6世紀後半には確認されている。氏は天皇・皇族への奉仕を行う集団の称号(大伴・物部など)として天皇から授けられたことに始まり、その序列を示すものが姓であった。名字(苗字)は中世に氏姓から分かれて生まれたものである。よって、奉仕を受け、称号を与える天皇には古代以来、氏姓も名字も存在しない。また、現在の天皇・皇族は国民を対象とした戸籍法の適用を受けず、戸籍に代わるものとして皇統譜が存在する。 監修・文/久禮旦雄 『歴史人』2024年10月号「天皇と皇室の日本史」より
歴史人編集部