解けたら賞金1億2千万円!? 簡単なのに世界中の数学者を悩ませる未解決問題とは
数学者を悩ませる未解決問題とは? (iStock.com/Djordje Krstic) 数学上の未解決問題として有名なものにフェルマーの最終定理、ポアンカレ予想、リーマン予想があります。数学が苦手でも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか? フェルマーの最終定理は1994年に、ポアンカレ予想は2002年に証明されていますが、2000年に100万ドルの賞金が懸けられているリーマン予想は、1859年から数多くの数学者や数学愛好家たちが証明を試みてきましたが未解決のままです。 このように数学には長きにわたり未解決の問題がたくさんあります。今回は、筑波大学システム情報系教授の三谷純さんの著書『日常は数学に満ちている』(山と溪谷社)より、1億2千万円の懸賞金が懸けられた未解決問題を紹介します。 計算自体は小学生でもわかるほど簡単だが、その法則が正しいことをまだ誰も証明できていない問題です。 この問題を証明するには、新しい数学の定理や法則を発見する必要があるかもしれません。
数学的難問! コラッツ予想
1より大きな整数を1つ好きに選んで、次の操作を繰り返してみましょう。 ・偶数なら2で割る ・奇数なら3倍して1を加える この操作を繰り返すと、どんな数から始めても必ず1にたどり着きます。 本当でしょうか? これが正しいことをまだ誰も証明できていません。かといって反例を見つけた人もいません。この問題はコラッツ予想と呼ばれていて、正しいかどうか証明できたら1.2億円をもらえる(! )数学的な難問です。
コラッツ予想
ルールは先ほど書いた通り。とても簡単です。さっそく好きな数字を1つ選んで試してみましょう。ためしに9を選んだとします。すると、9は奇数なので3倍して1を加えて28。次に28は偶数なので2で割って14。14は偶数なので2で割って7。7は奇数なので3倍して1を加えて22、…。こんな具合に続けていきます。 すると、次のように遷移しながら最終的には1になることを確認できます。 9→28→14→7→22→11→34→17→52→26→13→40→20→10→5→16→8→4→2→1 全部で19回の計算が必要でしたので、意外と手間がかかりました。単純に値が小さくなるわけでもなく、大きくなったり小さくなったりしながら、やがて最後に1になります。 15ではどうでしょう。同じようにしていくと、途中で40という数字が登場することを確認できます。 15→46→23→70→35→106→53→160→80→40 40という数字は、9を選んだときに途中で出てきたものなので、これ以上続けなくても、やがて1になることは明らかです。 このように、9と15という数字に対しては、コラッツ予想が正しいことがわかりました。 他の数字ではどうでしょう。みなさんも試してみてください。 ちなみに、もし27を選んでしまったのでしたら大変です。その場合は、121回の計算をしないと終わりません。一時的に9,232という大きな数字になって、そして最終的にはやっぱり1になります。 このコラッツ予想はまだ誰も証明できていない、とても難しい未解決問題です。ルールは簡単なので、だれも証明できていないのが意外に思われることでしょう。 本当にどのような数にも当てはまるかどうかは証明されていないのですが、およそ試せる範囲では、すべて正しいことが確認されています。2の68乗、つまり295,147,905,179,352,825,856までの数であれば、すべてこの法則が成り立つことが確認済みです。 でも、もしかしたら、これより大きな数字で始めたら1にならないかもしれません。そういった可能性を否定できていないのです。 みなさん、反例を探すのであれば、これより大きな数字で試してみてくださいね。 この法則が正しいことを証明できたら(または反例を示すことができたら)1.2億円の賞金がもらえるそうです(※1)。こんなに簡単なのに、多くの数学者が挑戦して、いまだに解決できていないなんて、ワクワクします。 ※1 2021年に株式会社音圧爆上げくんが、数学の未解決問題「コラッツ予想」に1億2000万円の懸賞金をかけると発表しました。 三谷純(みたに・じゅん) 筑波大学システム情報系教授。コンピュータ・グラフィックスに関する研究に従事。1975年静岡県生まれ。2004年東京大学大学院博士課程修了、博士(工学)。2005年理化学研究所研究員。2006年筑波大学システム情報工学研究科講師。2015年より現職。日本折紙学会評議員。2006年~2009年に科学技術振興機構さきがけ研究員として折り紙の研究に従事。映画「シン・ゴジラ」に折り紙展開図を提供したほか、テレビ出演など多数。令和元年度文化庁文化交流使としてアジア諸国で活動。2024年プラレール65周年公式アンバサダーに就任。コンピュータを用いた折り紙の設計技法などに関する研究を行っている。子どものころから紙工作とコンピュータが大好きで、それがそのまま現在の研究テーマにつながっている。著書に『ふしぎな球体・立体折り紙』『立体ふしぎ折り紙』(二見書房)、『文様折り紙テクニック』『曲線折り紙デザイン』『立体折り紙アート』(日本評論社)、『C言語 新版 ゼロからはじめるプログラミング』『Python ゼロからはじめるプログラミング』(翔泳社)など多数。X:@jmitani 三谷純(筑波大学システム情報系教授) 協力:山と溪谷社 山と溪谷社 Book Bang編集部 新潮社
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