名優ヒュー・グラント、「恋愛コメディの主役よりも、悪役がいい」
俳優は世界で一番邪悪で嘘つき!?
一方で、劇中「俳優は世界で一番邪悪で嘘つきな存在だ」というセリフが出てくる。まさにブキャナンを指し示すような言葉だが、俳優人生30年以上のグラントは「まったくその通りだよ」と笑顔を交えて語る。続けて「でも人というのは、みなエゴイスティックでナルシシスティックな生き物だと思うのです。なかでも俳優というのは、特にそういった部分が強い。俳優はよく“芸術”という言葉を使って自分の仕事のことを語るけれど、結局は『僕を見て! 私を見て!』ということだからね(笑)。そういう側面はあまり魅力的ではないと思う」と達観した目線を向ける。 ただ、こうした自己顕示欲の強さは、俳優にとってある程度必要だという。 「俳優業というのは、否定されまくるし、恥辱的なことも数多く経験していかなくてはいけない仕事。それを耐えうるには、尽きぬ自己愛がなければやっていけないと思うのです」としみじみ語る。
恋愛コメディの主役よりも悪役がいい!?
前述したように「ロマンティック・コメディの帝王」といわれているグラントだが「年を重ねて、演技というものにより興味を持てるようになった」と語ると「恋愛コメディでの大きな成功はすごく嬉しいけれど、そういったジャンルの主役よりも、悪人だったり、助演だったりする方がやりがいを感じている俳優は多いと思う」と語る。 「自分がおもしろいと思ったものは、どんどん受け入れていきたい」と抱負を語ったグラント。その言葉通り「ア・ベリー・イングリッシュ・スキャンダル(原題) / A Very English Scandal」では、同性愛の政治家が、自身の過去を隠すために、殺人に手を染めようとするという役に挑むが、「かなりの自信作です」と胸を張る。 自身を「古いタイプの人間」と語ったグラントは、多様化するメディアでの映像作品の視聴方法に「僕は映画館でフィルムの映写機から漏れ出る光が当たるような光景が好きなのです。映画作りにおいても、フィルムの時代は、翌日のラッシュを観るまで、自分の演技がわからなかったのですが、いまはすぐにモニタでチェックできてしまう。僕はフィルムのミステリアスさが好きなのです」と昔を懐かしんでいた。