W杯アジア2次予選で本田圭佑“監督”率いるカンボジアと森保ジャパンの激突可能性は12.5%
週に数回行うテレビカンファレンスを介して、オーストラリアの国内リーグが中断する国際Aマッチウイークにはカンボジアへわたって選手たちを指導してきた。初陣は昨年9月10日。マレーシアをプノンペンに迎えた国際親善試合は前半18分に先制しながら、後半に3失点を喫して敗れた。 初勝利をあげたのは6戦目。ホームにラオス代表を迎えた、AFFスズキカップ第3節を3対1で飾った。しかし、その後もベトナム、バングラデシュ両代表に連敗するなど、1勝1分け6敗の通算成績で迎えたパキスタンとのアジア1次予選で、カンボジアは変貌した戦いぶりを見せつけた。 世界中を仰天させた選手兼代表監督を開始した直後。日本語に訳せば「新しいチャレンジを始めるときには、いつも自分自身に言い聞かせている。失敗を恐れるな、と」となる英文を、本田は自身のツイートに投稿している。自分だけでなく、実はカンボジアの選手たちにも訴えかけていた。 国際舞台で確固たる結果を残していないカンボジアの選手たちは、チャレンジする精神を忘れ、ミスを犯すことを怖がっていた。メンタル面からの抜本的な改革が必須だと痛感した本田は、ミスをしたときにはむしろガッツポーズをしろ――と選手たちに要求していると、オーストラリアでの戦いを終えて一時帰国していた5月下旬に行われたイベントで明かしている。 日本とカンボジアはロシア大会出場をかけた2次予選でも、グループEで顔を合わせている。特に2015年11月17日にプノンペンで行われた一戦でカンボジアが奮闘し、スタンドも熱狂していた光景が、カンボジアサッカー界が限りなく成長・発展していく可能性を本田に感じさせ、異例のチャレンジを実現させるきっかけになった。 実質的な代表監督として掲げたビジョンは、カンボジア人特有の真面目さを前面に押し出しながら、育成年代やクラブチームにも共通する明確なスタイルを確立させること。チーム改革の成果は、ミスで先制されながらも逆転勝ちしたパキスタンとの第2戦で早くも具現化されているようだ。 12日に再び帰国した本田は、一夜明けた13日に33歳になった。オーバーエイジとして来夏の東京五輪に出場し、金メダルを獲得する夢を成就させるためにもメルボルン・ビクトリーを退団し、再びヨーロッパの舞台に戻って自分自身を磨く構想も描いている。前方には誰もいないチャレンジロードを刺激と興奮を楽しむかのように、本田はまっすぐに歩んでいく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)