篠山竜青はどう生きるか(後編)(川崎ブレイブサンダース 篠山竜青)
「考えてはいるんですよ。 どうしたらいいかなって考えてるだけで、まったく答えが見つかっていないっていう。だから足掻いています。オフになったら、リーグの人であったり協会の人であったり、いろんな大人の人に会って相談しているところです。 なので、いまはバスケのことしか考えないから未来のことは考えないんだっていうことでこうなっているわけではなくて、考えてるのに全然見えてこないから苦しい、っていうだけです。」 バスケットが好きで、バスケットを職業にして生きてきたからこそ、他のなにかを見つけていくのは大変なことだ。 自分が選手としてたくさんのお客さんの前でプレーをする、が根源にあるのなら、選手でなくなってしまえば目指すものが消えてしまう。 「(引退後に)したいことがないっていうのが一番しんどくて、それがいますごく困っている理由なんだなって思うんですよね。趣味もないですし、しいていえばなにかを求められて、それに対してアクションを起こして、手の届く範囲の人にありがとう、って言ってもらえることが1番の喜びなのかなっていうのは自分の性格的に感じているところです。バスケットに関わることで求められるところに行って求められることをやってバスケット界に恩返しができたり、還元できたりっていうことができたら一番いいのかなって、すごい漠然とですけど、そんなことを考えながら日々過ごしています。」 彼の持つ価値を必要とする人々は少なくないだろう。 本人はこれまた控えめに、なにひとつかたちにできていないような物言いをしたが、イメージを実現するための行動はすでに起こされている。 「行動といえるものかわからないですが、橋本竜馬(越谷アルファーズ)と湊谷安玲久司朱(元・横浜ビー・コルセアーズ)と合同会社みたいなのを作って(https://www.instagram.com/88basketball_camp/)クリニックをやったり、もしかしたら今後スクール事業に進んでいくのかどうなのかわからないですけど、バスケットでなにか還元していく仕組みとか活動をひとつのアクションとしてやっていることはあります。」 篠山ほどの実績、立場を確立したプレーヤーともなると、端からみれば引退後もバスケット界で生きていくことになんら弊害はないように思える。 しかしそこにも多くの苦悩や葛藤があり、生きていくことの難しさは誰にとっても等しくもたらされるのだと実感する。 それに本格的に向き合うのはまだ先のことなのかもしれないが、バスケット選手、ひいてはプロスポーツ選手にとって大きな問題のひとつであろう選手後の生き方の、見事な発明を期待してやまない。 「これを記事にしてもらうのはちょっとアレかもしれないんですけど、現状1番いいなって思うのは “なんちゃらかんちゃらアンバサダー” みたいになって、謎の職種でクラブにいて給料もらえたら1番いいなって思ってます。長めの横文字の、最終的に “なんちゃらアンバサダー” で終わるやつ。」 遥か先であろう篠山の引退を楽しみにしている。
石崎巧