アメリカ文化と日本文化の意外な共通点(下)――アメリカ建築・日本建築・モダン建築
アメリカ人日本文化研究者の三世代
『アメリカ文化の日本経験』(J・M・ヘニング・空井護訳・みすず書房)という本は、アメリカの日本を見る目が時代につれて大きく変化する過程を描いていて興味深い。日本の急速な近代化をまのあたりにして「日本人はアングロサクソンである」という評価まで現れたという(当時はアングロサクソンが人種競争の頂点に立っていた)。もちろん太平洋戦争時には、自分の命を顧みない狂信的な兵士というプロパガンダに変化した。 僕の弟子で、日本建築を研究して学位を取り今は東海岸で准教授をしているアメリカ人によれば、戦後アメリカの日本文化研究者には三つの世代があるという。 第一世代は、アメリカが圧倒的な力をもっていた時代の、E・サイデンステッカー、E・ライシャワー、D・キーンなどで、日本文化に対する強い畏敬と愛情をもつ人々である。 第二世代は、日本の工業力が強くなり貿易摩擦が過熱して、むしろ日本文化の集団的生産体制に警戒感をもつ人々である。 そして第三世代は、これまでの敬愛と警戒を超えて、建築や美術や文学など専門分野を冷静に研究する人々だという。 つまり異文化の評価は、時代によって、国家と国家の力関係によって変化する傾向を免れないのである。しかしわれわれは日本文化を正当に評価してもらいたいし、われわれもアメリカ文化を正当に評価したいものである。これがなかなか難しいのだ。 上下二回にわたって、太平洋を挟んだ二つの国の文化共通点を取り上げたが、もちろん多くの相違点があってのことである。