アメリカ文化と日本文化の意外な共通点(下)――アメリカ建築・日本建築・モダン建築
トランプ大統領と安倍晋三首相の関係は、トランプ大統領と他国の首脳の関係に比べ、非常に親密だと言われているようです。ただ、建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、「軍事同盟ばかりが強調される一方で、日米の文化交流は希薄になっているように思える」といいます。 しかし、建築の分野を見ると、両国には文化的共通点があるようなのです。若山氏が独自の「文化力学」的な視点から論じます。
近代建築の巨匠たちと日本
このごろは日本とアメリカの関係において軍事同盟ばかりが強調されているが、ここではより文化的な側面に注目したい。対比的にではなく共通するところを、僕の専門である建築から見ていこう。 少し前に、その作品が一括して(日本では上野の国立西洋美術館が含まれる)世界遺産に登録され、にわかに知名度の増した感のあるル・コルビュジエだが、今度それがあるとすれば、フランク・ロイド・ライトだろう。アメリカ人だ。 そのライトがアメリカ以外の国に設計した珍しい建築「帝国ホテル」を、いともあっさり取り壊したのは、文化国家として恥ずべき行為であった。逆に、玄関まわりだけでも博物館明治村(愛知県犬山市)に移して保存したのは立派な行為であった。またあまり目立たない小品ではあるが、ライトは東京に自由学園(明日館)という作品を残している。ライトの造形的天分が日本の木造技術と融合した名建築である。 建築の世界では、このフランク・ロイド・ライト、ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエの三人を、また時にヴァルター・グロピウスを加えて四人を、「近代建築の巨匠」と呼ぶ。彼らの作品には、様式に縛られ装飾に頼る過去の建築と別れを告げたモダニズムのパイオニアとしての革命性が感じられる上に、その造形力は今の建築家たちの作品と比べても圧倒的な存在感を放っている。 まず、サイモンとガーファンクルの歌でも知られる、アメリカ文化史上最大のヒーローの一人である建築家フランク・ロイド・ライトの作風から、さらにバウハウスの初代校長であったヴァルター・グロピウスに関するエピソードから、アメリカ文化と日本文化の共通点を探ってみる。