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安易な自粛の根底にある“やめられない社会”

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Book Bang

 テクノバンド「電気グルーヴ」のメンバーで、俳優でもあるピエール瀧が、麻薬取締法違反の疑いで逮捕されたのは昨年3月だ。レコード会社は即座に電気グルーヴの全ての音源・映像の出荷停止、配信停止を決定する。完全な自粛だが、理由は示されなかった。  逆に「反社会的行為は容認できない」、「犯罪者が社会に与える影響を考慮した」などと言う必要もない、当たり前だという姿勢が透けて見えた。宮台真司、永田夏来、かがりはるき『音楽が聴けなくなる日』は、「それって本当に当たり前なのか?」という疑問からスタートしている。  社会学者の永田は、事なかれ主義や前例主義など自粛の背景にあるものを指摘する。音楽研究家のかがりは、この30年間の自粛の歴史を振り返り、平成を「自粛の時代」と呼ぶ。そして『サブカルチャー神話解体』などの著書で知られる宮台は、この問題が音楽というジャンルに限定されたものではなく、社会の根幹に関わるテーマであることを明らかにしていく。  中でも宮台の主張に注目したい。原発そのものよりも「原発をやめられない社会」をやめよう。同様に、電気グルーヴ作品の販売・配信停止の措置そのものよりも「そうした措置をやめられない社会」をやめようと言うのである。  不祥事発覚後、当事者の出演や活動を控えるのは仕方ないかもしれない。しかし、過去の作品にまでさかのぼる安易な自粛は、思考停止に他ならないのだ。 [レビュアー]碓井広義(メディア文化評論家) 1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年にわたりドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」(新潮社)、「ドラマへの遺言」(同)ほか。毎日新聞、北海道新聞、日刊ゲンダイなどで放送時評やコラムを連載中。[公式サイト]碓井広義ブログ 新潮社 週刊新潮 2020年6月25日早苗月増大号 掲載

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