電事連会長「原発は最大限活用すべき」エネ基改正で危機感 「依存度低減」の文言削除訴え
電気事業連合会の林欣吾会長(中部電力社長)は29日、日本記者クラブで会見し、政府が今年度見直す中長期のエネルギー政策の指針「エネルギー基本計画」を巡り、原発について「可能な限り依存度を低減する」という記述の削除を訴えた。「『低減』という言葉を削除して、はっきりと新増設やリプレース(建て替え)を述べていただきたい。将来の日本を考えると非常に大切なことだ。原発を最大限活用すべき電源に位置づけて、旗幟(きし)を鮮明にしてほしい」と強調した。 依存度低減の方針は、東京電力福島第1原発事故後の平成26年に決定したエネ基本計画に盛り込まれた。その後の2度の見直しで維持され、現在の石破茂政権も残す方向で調整している。 電力需要を巡っては、データセンター(DC)の拡大などで急増する見通しとなっている一方、国内の原発は33基のうち、再稼働は13基に過ぎない。令和4年度の電源構成で原発が占める割合は5・5%にとどまる。 林氏は「再稼働が遅れていることで、いろいろな事業会社が撤退している。(原発の)サプライチェーンが非常に脆弱(ぜいじゃく)になっている。位置付けをはっきりとして、再稼働に向かっていかないとサプライチェーン自体なくなってしまう」と危機感を募らせた。 火力発電については、「再生可能エネルギーも含めたバックアップ、系統の安定化を担っている。火力がなくなると電力のネットワークが持たない」と述べ、天候や時間によって左右される太陽光や風力発電に対するバックアップ電源としての機能を強調した。「脱炭素化し、二酸化炭素を出さない火力にしていく」と述べ、アンモニアなど脱炭素燃料を混焼する火力発電の開発・普及に力を入れていく考えを示した。 エネルギーの位置づけについては、省エネの進展に伴い、電気需要は「シュリンク(縮小)していくと思われがちだった」と指摘。「データセンターをはじめ、日本がもう一度世界で冠たる国になるためには、新しい産業が必要で、エネルギーが基盤となると再評価されている。安定供給をどう保っていくか、日本の経済の成長をどう担保するか、役割が明確になった」と述べた上で、「矜持と自覚をもって強くメッセージを出していきたい」と語った。(奥原慎平)