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開高健、伊集院静、桂歌丸、松方弘樹…釣り好きに迫った「釣りの名著50冊」出版

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“釣り愛”をとおして著名人たちの人物像を掘り下げた

 釣りライター・世良康氏が6月1日、「釣りの名著50冊 古今東西の『水辺の哲学』を読み解く」をつり人社から出版した。釣りをテーマにした50の作品を、書き手の人生や時代背景などと合わせて読み解いた良書だ。 【画像】釣り解禁! 本書連載の月刊誌「つり人」ではアユ釣りを大特集! 「釣りの名著50冊 古今東西の『水辺の哲学』を読み解く」は釣り歴約35年の世良氏が、釣り専門の月刊誌「つり人」に74回連載してきた読みもの「釣本耽読」から50本を抜粋しまとめたもの。  ノーベル文学賞を受賞したアーネスト・ヘミングウェイの「老人と海」といった超有名作品から“政財界の黒幕”といわれた児玉誉士夫の釣りの随想集「生ぐさ太公望」、数々の釣り紀行で知られる開高健の短編集「戦場の博物誌」、作家・伊集院静の短編「チヌの月」、落語家・桂歌丸のエッセー「岩魚の休日」、俳優・松方弘樹の釣りバカ武勇伝「松方弘樹の世界を釣った日々」などバラエティに富む人物の釣りと人生がとりあげられている。

開高健はなぜ釣りにハマッたのか?

 たとえば、釣り紀行「オーパ!」「フィッシュ・オン」などが今も多くのファンに支持されている開高健だが、短編集「戦場の博物誌」の表題作「戦場の博物誌」に釣りにハマッた理由が綴られているという。「戦場の博物誌」には戦場で見た生き物たちーーハゲワシ、カモシカ、ラクダ、イナゴ、ヤモリ、ライギョなどについての記憶を記しているが、開高にとって釣りの原点は食糧確保の手段だった。  1945年の終戦間際、父親をすでに亡くし母と2人暮らしだった開高は、眠れないほどの空腹を抱えた日々を送り、イナゴやライギョをとっては腹を満たしていたという。そんな記憶も薄れていた約20年後、朝日新聞社の臨時海外特派員としてベトナム戦争に取材に行った際、サイゴンの市場で売られていたライギョを目撃。また、砲弾の飛び交うメコン・デルタの農村地帯で悠々とライギョを釣る農民たちを目にして、驚き感動する。このとき、餓死と空襲におびえながら釣りをした自身の中学時代がまざまざと蘇ったのだ。  世良氏は「世界の戦場を駆けめぐり、人間に対する絶望を背負ってさまよい、その果てにサオをかついで釣り場を求め、地球の奥地に入り込むことになったのは、(中略)文学的な行き詰まりからでもない。時間の彼方に置き忘れていた、ひ弱だがたくましく凜々しく懸命に生き延びた太平洋戦争末期の少年時代への、果てのない追憶と鎮魂の旅であったのだという気がしてならないのである」と結んでいる。 “釣り愛”をとおして著名人たちの人物像を掘り下げた、全367ページのぶ厚い1冊。釣り好きでなくても楽しめる。

ENCOUNT編集部

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