「脱会には居場所が必要」「オウムの教訓生かされず」 鈴木エイト氏×江川紹子氏が語る旧統一教会問題
元首相への銃撃事件を機に広く明るみに出た世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題。家庭を破綻させるほどの多額の献金、宗教法人の解散命令の是非、適切に養育しない「宗教二世」問題など複数の論点が持ち上がり、政府も対策に動き出した。そこで、オウム真理教事件など長く宗教問題を追ってきた江川紹子氏と今回の旧統一教会問題で圧倒的な取材を見せてきた鈴木エイト氏が、被害者の救済に向けた今後の課題を語り合った。(文:ジャーナリスト・森健、撮影:長谷川美祈/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
「解散命令請求のために質問権」は適度な提言
文化庁は11月22日、解散命令請求を視野に入れ、「質問権」を行使。旧統一教会に対し、教団の管理運営、財産・収支の状況などが確認できる資料の提出を求める書類を送付した。背景にあるのは、10月17日、消費者庁で行われてきた「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」が出した報告書だ。同報告書の発表直後、岸田文雄首相は質問権を行使して実態解明を目指すと表明した。 ──消費者庁で行われてきた「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」が10月半ばに報告書を出し、解散命令請求にも言及しました。どう評価しますか。
鈴木エイト(以下、エイト) 「解散命令請求をすべき」という提言ではなく、「解散命令請求をするために質問権を行使してください」ととどめたところがよかった。 江川紹子(以下、江川) 報告書の提言として“加減”をよくわかっていたのがいいですね。こういう報告書は強すぎる主張になると逆に実現性が乏しくなる。今回は、ほどよく背中を押した。 ──質問権の行使に際しては、所管の文化庁だけではなく、他省庁からも応援が入りました。
エイト 国税庁、金融庁、警察庁、そして法務省から2人ずつ8人。 江川 応援が入ったのは、事実関係で証拠を固める仕事の人たちですよね。そこで証拠を集めて、相手に突きつけて説明させるわけでしょう。ただ、あの団体でお金に関して難しいのは、信者が外国にお金を持っていってしまうところです。 エイト 日本の宗教法人から韓国の宗教法人の財団に送っているお金と、信者個人が韓国の宗教法人に先祖解怨(かいおん)として直接送っているお金、そして日本の信者が韓国の行事へ参加する際に外為法限度額の100万円を運ばせるとされる3種類があります。この韓国への送金ルートは何らかの不法行為に問えるのではないかと司法関係者から聞いたことがあります。金融庁や国税庁が入ってきているので、教団側の危機意識は高まっていると思います。