水族館にフラミンゴ、なぜいるの? 福井県の越前松島水族館、実は「国内初」のすごい歴史
「水族館になぜフラミンゴ」―。福井県坂井市の越前松島水族館に子どもを連れて行ったお母さんから福井新聞の調査報道「ふくい特報班」(通称・ふく特)に疑問が寄せられた。水辺に生息する鳥がいてもおかしくないのでは…と思いながらも水族館に尋ねると「年配の人は覚えているかもしれないが63年前に開館した後、ライオンやトラがいる動物園も併設していた」という。その名残をとどめるのがフラミンゴだった。 【動画】越前松島水族館のチリーフラミンゴ 1959年5月、民間の水族館として開業した。会社の事業の柱は三国競艇。開業の経緯について鈴木隆史館長は「ボートレースの収益を還元するため、地元の子どもに何が欲しいかアンケートをして水族館を開業した」という。ただ、動物園が欲しいという回答も多く、名称は水族館のまま「ライオン、トラ、クマ、ゾウ、ニホンザル、チンパンジーなどの動物や鳥もたくさん入れた。半分は動物園だった」という。 開館5年後の64年秋に南米産チリーフラミンゴ8羽が仲間入り。69年7月に2羽がふ化した。これが国内初の自然繁殖となり、70年に日本動物園水族館協会の繁殖賞を受賞した。 当時のフラミンゴを知る人は水族館に誰も残っていない。鈴木館長も81年入社。福井新聞記事を探すと、その後もふ化が続き、76年には16羽に増え「子どもたちの人気者」と紹介していた。現在フラミンゴは2羽。「動物は老衰や病気で死ぬと補充しなかったため、次第に減っていった。当時の動物で今残っているのが、フラミンゴ」という。 個体識別をしておらず、2羽が何年に生まれたかは不明。鈴木館長は「日本初の自然繁殖で生まれた個体かもしれない」と思いを寄せる。 人気者の座はイルカやペンギン、アザラシなどに譲っているが、紅色で体高1メートルほどの大きな鳥を目にした家族連れや子どもらは「きれい」「足が細い」と見入っていた。 × × × 福井新聞「みんなで発掘 ふくい特報班」(ふく特)は、暮らしの中で感じた疑問や地域の困りごと、不正の告発といった情報を寄せていただき、記者が取材を進める調査報道企画です。
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