アフガンにも救いの手を タリバン掌握今も混乱続く 千葉大教授「命に違いはない」 戦火のウクライナ例、強調
ウクライナ避難民の受け入れが千葉県内でも進む中、アフガニスタン人の日本への避難を援助してきた千葉大の小川玲子教授(社会学、移民研究)が千葉日報社の取材に応じ、国によって支援策が異なる現状を指摘した。アフガニスタンでは、イスラム主義組織タリバンが政権を掌握し、今なお混乱が続いている。小川教授は、日本はウクライナ人は受け入れるが、アフガニスタン人は入国すら難しいとして、「命の値段に違いはない。アフガニスタン人も大事にしてほしい」と切実に語った。 タリバンが首都カブールを制圧してから11日後の昨年8月26日、小川教授の下に一本の電話が入った。「このまま黙ってタリバンに殺されるのを待つより、リスクがあっても脱出したい」。泣きながら訴える女性(20)はカブール居住。県内に住む家族の知人から小川教授の連絡先を聞き、頼ってきた。 小川教授によると、女性はハザラという少数民族出身で、タリバンとは異なる宗派。女性は「タリバンはリーダーからの指示があればハザラを生かしておくことはできないと言っている。タリバンが来たら殺されるか陵辱される」と訴えた。 小川教授は、女性と家族計8人の支援を始めた。アフガニスタンの日本大使館が閉鎖されたため、隣国のパキスタンでまずは短期滞在90日のビザ取得を計画。日本政府はコロナの水際対策として、「特段の事情」がない限りパキスタンからの短期滞在ビザを停止したため、小川教授は人道的観点から特例を認めてほしいと外務省に求めた。 昨年9月上旬に同省にパスポートのリストを送付。女性の親族で、経営管理ビザを持つ県内在住の男性を身元保証人として申請した。一向にビザが下りず、同省から「身元保証人を日本人か永住権を持つ人にしてほしい」「日本での勤務先や留学先を決めてから手続きしてほしい」などと返答があった。 母国で十分な教育を受けた女性は少なく、勤務先や留学先を見つけるのは困難。小川教授は「頭が真っ白になった。家族が殺されそうになっている人にどう説明すれば良いのか」と頭を抱えた。現在も日本への入国は実現しておらず、諦めて他国に避難した人もいるという。 一方、ロシアがウクライナに侵攻した6日後、日本政府は避難民の受け入れを表明。ウクライナ避難民は身元保証人の必要がなく、短期滞在ビザから長期間の特定活動ビザにすぐ切り替えられ、生活費の支援もある。 「ウクライナ避難民の支援は素晴らしいこと。だが、アフガニスタン人が認められないのはなぜなのか」。小川教授は疑問を呈す。 2020年12月の住民基本台帳によると、千葉県に住む外国籍者は約16万人。このうち約1500人はアフガニスタン人だという。「千葉県はアフガニスタン人が多い。アフガニスタンコミュニティーも大事にして。ウクライナのように、今後支援が広がってほしい」と訴えた。