「小が大を喰うには相手の優越感を逆手にとって、“後の先”をとる」スコアを作るための考え方を語る【“甦る伝説”杉原輝雄の箴言集⑭】
1960年代から2000年代初頭まで、50年の長きに渡って躍動した杉原輝雄。小柄な体、ツアーでは最も飛ばない飛距離で、当時トーナメントの舞台としては最長の距離を誇る試合で勝ったこともある。2打目をいちばん先に打つのだが、そのフェアウェイウッドが他の選手のアイアンより正確だった。ジャンボ尾崎が唯一舌を巻いた選手で、「マムシの杉原」、「フェアウェイの運び屋」、「グリーンの魔術師」「ゴルフ界の首領(ドン)」と数々の異名をとったのも頷ける話だ。「小が大を喰う」杉原ゴルフ、その勝負哲学を、当時の「週刊ゴルフダイジェスト」トーナメント記者が聞いた、試合の折々に杉原が発した肉声を公開したい。現代にも通用する名箴言があると思う。
相手の優越感を逆手にとる
ーー「小が大を喰うには相手の優越感を逆手にとって、“後の先”をとる」 相手の優越感といえば、飛距離でしょうね。ボクはツアーでもいちばん飛ばんほうやったから、相手はボクより大体30ヤードは先にいってます。相手はおそらく優越感に浸っているはずです。でも相手がなんぼ飛ばしたからといって、必ずしもボクより1打少なくあがるとは限りません。むしろその可能性は少ないんです。 それでボクが先に打つわけです。この時のクラブ選択は非常に大事です。相手に惑わされず、自分の技術の範囲内で淡々と“仕事”をする。まあ、乗らないまでも寄せてパーをとれるよなところまで打っておきますんや。ここでは相手を上回るようなスコアをだす必要はないんです。相手と並ぶスコアでいいんです。 自分は“小”だと認識してマイペースでスコアをつくっていけばいいんです。 これに対して相手は飛んだという優越感があるので、同じスコアなら損をしているという気持ちになるはずなんや。つまり、飛距離にこれだけ差があるのに、いいスコアであがって当然だという気持ちがどこかにあるので、同じスコアが続くと、相手は焦れてくるはずです。飛距離に自信ある人ほどそういうことに動揺しやすいもんです。 いつも先に打って、自分のミスを最小限にとどめて引き分けにもちこむわけです。相手はますます力も入ってきてや、崩れてくることが多いもんです。 これが“後の先”といいましょうか。“小”が先手をとって相手を圧迫していく。相手の優越感を逆手にとって、“小が大を喰う”戦法に持ちこむのです。
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