若い世代の利用者が増える「Discord」、保護者が知っておきたい見守り機能
コミュニケーションサービス「Discord」は2023年7月14日、10代のユーザーを保護するために「ファミリーセンター」を導入したことを発表しました。ファミリーセンターとは、保護者が子どものDiscord活動を見守ることができる機能です。保護者と子どもがお互いに自分のアカウントで接続を許可すると、保護者は子どもの以下の情報を見られるようになります。 【画像】新入生のコミュニケーションツール利用実態調査(出典:東京工科大学) 最近追加された友達 (表示名とアバターを含む) 子どもがダイレクトメッセージ、またはグループメッセージでメッセージを送信したり電話をかけたりしたユーザー(表示名、アバター、最後のメッセージ、通話の時刻など) 参加または参加しているサーバー(サーバー名、サーバー アイコン、サーバー メンバー数など) つまり、子どもがDiscordでどんな人とつながり、誰と盛んにやり取りしているかを保護者が把握できます。こうしたペアレンタルコントロール機能はいろいろなサービスでも用意されていますが、Discordの場合は子どもの活動状況がかなり詳細にわかり、有効な見守りになりそうです。 Discordはつながりたい若者に人気 ここでDiscordについて紹介しておきましょう。2015年にサービスを開始したDiscordは、テキスト、音声、ビデオによるコミュニケーションに対応したサービスです。「サーバー」と呼ぶいわゆるグループのような場所に参加して、同じサーバー内のメンバーと話したり、ユーザー同士で通話やメッセージを交わしたりできます。少し古い情報ですが、全世界で約1,900万のサーバーがあり、月間アクティブユーザー数は1億5,000万人以上と、世界中で活発に使われています。 Discordはそのレスポンスの良さや安定性から、おもにオンラインゲームをするときのチャットサービスとして利用されていました。しかし、現在ではゲーム以外でも、芸能人のファン同士の交流や企業のカスタマーサポート、同じ世代の雑談用といったさまざまな用途で使われるようになっています。 日本国内での認知はまだそれほど高くはありませんが、ゲーム好きや理系の学生を中心に利用率が上がってきています。東京工科大学が2023年5月に発表した「新入生のコミュニケーションツール利用実態調査」によると、Discordは男子の約6割が利用しており、LINE、Twitter、Instagramに次ぐ4位です。女子を合わせた調査でも、調査を始めた3年前から利用率は増加の一途をたどっています。 Discordは、つながり続けたい若者のニーズをとらえています。音声チャットでは、誰かがサーバーの音声チャンネルに入ると通話したい人たちがそこに集まり、雑談やミニゲームなどを楽しめます。グループ通話なので、抜けたくなったら抜けても、残りの人たちで会話を続けられるので気兼ねがありません。サーバーは誰でも作れるため、仲間うちの交流にも利用できます(知り合いだけのサーバーも数多く存在します)。 オープンな場所ではトラブルも Discordは同じゲームを好きな人たちと出会い、一緒にゲームをしたり情報交換をしたりと、知り合い以外とのオープンな交流にも向いています。しかし一方で、交流のなかで嫌な目に遭う子どももいます。 ネットの掲示板を見ると、「裸の写真を要求された」「卑猥な画像を送られた」などの性被害に遭っている中学生女子や、「サーバーのメンバーと口論になって脅された」というユーザーが悩みを打ち明けています。 音声チャットでは、会話の内容が記録されていないことがほとんどです。トラブルに巻き込まれていても、保護者が介入したときにはこれまでの経緯がわからず、いったい相手が誰なのかすら、子どもの記憶と発言から探ることになります。 こうした事態を防ぐために、前述のファミリーセンターが設けられました。会話の内容までは把握できませんが、子どもがどのサーバーを利用していたか、誰とメッセージを交わしていたかなどを知ることができます。友人との交流に使うという約束をしてDiscordを始め、のちに知り合い以外とつながってしまった場合でも、すぐにストップさせられます。もしお子さんがDiscordを始めたがっている、もしくはすでに使っているお子さんがいるご家庭は、ぜひファミリーセンターを活用して見守ってあげてくださいね。 著者 : 鈴木朋子 すずきともこ ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー。スマホやSNSなど、身近なITサービス全般に関する記事を執筆。なかでもSNSに関しては、コンシューマーからビジネスまで広く取材を行い、最新トレンドを知るジャーナリストとして定評がある。また、安全なIT活用をサポートするスマホ安全アドバイザーとして記事執筆や講演も行う。著書は『親が知らない子どものスマホ』(日経BP)、『親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本』(技術評論社)、『インターネットサバイバル 全3巻』(日本図書センター)など。
鈴木朋子