経済と街を結びつけたアイデア光る「マチノミクス」
「経済探偵!マチノミクス」(テレビ東京・BSテレ東系列)は、かつては「視聴率番外地」と揶揄(やゆ)されたテレ東が、経済番組を基盤として「キー局の背中が見えた」といわれるまでになった、その底力をみせる新しい形の情報番組である。 いわゆる「散歩モノ」の番組にみせて、その中身は「ブラタモリ」が地形にこだわり、「ちい散歩」がふらりと触れ合いを楽しむのとは、ひと味違った風合いに仕上がっている。 「ブラタモリ」のなかで、タモリへの指令書が入った玉手箱に似た、「経済探偵」に必需品である望遠鏡などが入ったアタッシュケースが登場するのは、ご愛敬である。さまざまな「散歩モノ」に対する敬意を感じる。
情報番組に見える経済ドキュメンタリー
大開発が進む、品川駅周辺と渋谷駅周辺で「マチノミクス」の発見の散歩をする回(5月15日)を観た。俳優の高橋克典とタレント・俳優の岡田結実を品川に、タレント・俳優の原田泰造を渋谷に。このキャスティングもいい。 高橋克典は品川在住。主演して大ヒットした「サラリーマン金太郎」のロケを駅周辺でやった思い出を語る。岡田結実は、連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」で俳優としての才能をみせた。原田もまた、いまや俳優としてのイメージが強い。放送中のドラマ「インビジブル」(TBS)の刑事役もはまっている。 「マチノミクス」の番組から、ちょっと脇道にそれた。もとに戻ろう。品川編では、テレビ東京のキャスター・大浜平太郎が、渋谷編では解説委員・山川龍雄が、タレント陣の脇を固めている。情報番組にみえて、実は経済ドキュメンタリーの佳作なのである。
品川編の白眉は、新幹線の線路下で掘削が進められている、巨大な空間である。JR東海が約7兆円を投じて、建設中のリニア中央新幹線の品川駅である。 私事であるが、筆者は先日、約20年ぶりに山梨県にあるリニア実験線での試乗会に参加することができた。超電導リニアがすでに、営業を前提として車内の内装の検討などをしていることに驚いた。時速500キロメートルを超える走行は、前回も経験済みだったから、車両がまさにすぐにでも営業ができるような完成形に近かったのである。 中央新幹線は、東京-大阪間を67分、東京-名古屋間を40分で結ぶ。「マチノミクス」は、首都圏と中京圏、関西圏が一体となることによって、その経済規模はフランスと韓国を抜く、という。 街のなかで、なにげなく見ている風景、見過ごしている風景のなかに、「経済」を見つける知的好奇心をかきたてるところが、制作者の腕のよさをうかがわせる。