封印されたサンリオのキャラ「キャシー」…「ミッフィー」著作権侵害への“弱腰対応”が招いた悲劇と“まさかの結末”
裁判は泥沼化の様相を呈したがまさかの結末へ
これを受け、サンリオは仮処分決定に対し異議申立を行うとともに、ミッフィーの図柄の商標権に対する取消訴訟を提起した。 一方、メルシスも仮処分決定を足掛かりに本訴を提起するなど、事態は泥沼の様相を呈したのである。 ところが、この訴訟合戦には思わぬ形で終止符が打たれた。 数ヶ月後、日本で東日本大震災が発生したのだ。甚大な被害を目の当たりにした両社は、お互いに訴訟費用を浪費するより、そのお金を義援金として共同で寄付することで和解する道を選んだのである。 ある意味、美談で終わった事件であり、実際、震災後の混乱の中では好意的に受け止められた。当時、『週刊朝日』は「『今はわたしたち、ケンカしてる場合じゃないよね!』。小さなうさぎたちの可愛らしい声が聞こえてくるようだ」*と評している。 *『週刊朝日』2011年6月24日号 岩崎眞美子「ミッフィー×キティのパクリ裁判、仲直り決着のちょっぴりいい話」 だが、筆者の見立ては異なる。和解といっても、サンリオが最初に約束した通り、キャシーの商品供給を中止することが前提の和解なのである。ミッフィーちゃんとキャシーちゃんが「ケンカしてる場合じゃないよね!」と手を取り合って共存する道を選んだわけではなく、キャシーちゃんはこの世界から退場させられたのだ。 サンリオのウェブサイトには「ハローキティの家族やなかまたち」というページがある。その「お友だち」のコーナーには、くまのタイニーチャム、もぐらのモーリー、ねずみのジュディなど、12人ものお友だちがキティちゃんを囲んでいる。 だが、ここにはもう、キャシーちゃんはいない。今や一種の封印キャラクターになっているのだ。まるで、キティちゃんが、隣のクラスのリーダー格のミッフィーちゃんから「今日からあの子とはおしゃべりしちゃダメだから」などと言われて、あっさりキャシーちゃんと絶交したかのような顛末である。これは、イ・ジ・メじゃないのか!?
友利昴