封印されたサンリオのキャラ「キャシー」…「ミッフィー」著作権侵害への“弱腰対応”が招いた悲劇と“まさかの結末”
もともと、パクリを疑っていた原告
実はトラブルの背景には、ブルーナのサンリオに対する積年の恨みつらみがあった。彼は長年、サンリオの看板キャラクターであるハローキティに対して著作権侵害の疑いを抱いていたのである。 2008年の取材で、彼は「〔ハローキティは〕ミッフィーのコピー品だ。まったく好きになれない。冗談じゃない。自分自身で考えて作品を作るべきだ」*と、痛烈な言葉で盗作と決めつけている。 いやはや、ハローキティがミッフィーの盗作というのは相当な暴論だが、そのように思い込んでいたブルーナがキャシーの存在を知れば、怒り狂ったことは想像に難くない。 * The Telegraph 2008. 07. 31 Horatia Harrod “Dick Bruna, creator of the Miffy books, talks about his life and work” だが、これはそう簡単にサンリオを断罪できるような問題ではない。うさぎを擬人化キャラクター化するにあたって、うさぎを二等身にして、服を着せて、直立させるのはアイデアであって、表現ではない。耳を長く描くのはうさぎだから当たり前で、目を黒点で描くのはありふれた表現である。 要するに、共通点はアイデアか、ありふれた表現に過ぎないのだ。そしてこれらの要素は、特定人に独占させることの方が不適切だから、盗作か否かを判断するうえでは比較対象から外さなければならない。 すると、どうだろう。口と鼻の有無、目の位置関係、顔と耳のバランスなど、具体的表現を比較すれば、異なる点が目立つではないか。 サンリオのデザイナーがミッフィーを知っていた可能性はあるだろう。もしかしたら、参考にしていたかもしれない。しかし、だからといって、抽象的なアイデアやありふれた表現の独占を特定の作家に許してしまえば、他に誰も、子ども向けに二等身で服を着たうさぎを描けなくなってしまう。これは、簡単に受け入れてよいクレームではない。