海外勢の日本国債投資、5年ぶり規模に拡大-ポジティブキャリー魅力
(ブルームバーグ): 海外投資家は日本銀行による金融引き締めが緩やかなペースにとどまり、資金調達コストが低水準に維持されるとの見通しの下、日本国債への投資を増やしている。
日本証券業協会が今週発表したデータを基に、金利リスクを考慮してブルームバーグが分析したところ、世界のファンドが年初からの10カ月間に、同じ期間として2019年以来の規模となる14兆7000億円分の日本国債を購入したことが分かった。このうちの約44%は当初の償還期間が10年超の債券だった。
SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストはリポートで、主要先進国の国債のうち、短期調達コストとの比較で日本国債だけが「明確にポジティブキャリーであること」が海外勢の投資意欲につながっていると指摘。日銀の利上げが緩やかで想定ターミナルレート(金利の最高到達点)も低位にとどまる中、ボラティリティーが低い日本国債で「キャリーポジションを積み増す動きが持続的に発生しているのではないか」との見方を示した。
日本国債の名目利回りは他の主要国債よりはるかに低いが、為替ヘッジを行う投資家にとっては債券価格と為替レートが安定している限り、米国債よりも高いリターンが期待できる。日本と他国との金利差が大きく、円をショートポジション(売り持ち)にする方が割安なためだ。
ブルームバーグが集計したデータによると、対ドルでの円の下落をヘッジする投資家にとって、日本の10年債利回りは5.7%だが、英国やドイツの10年債は約4%にとどまる。短期借り入れで投資資金を賄う場合、米国債の利回りはマイナスになる。
ヘッジ後の利回りの高さは、米国債よりも格付けが低い日本国債を保有する上で投資家が求めるリスクプレミアムを反映している可能性はあるが、それでも依然として魅力的な取引だ。
SMBC日興の奥村氏は、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを続けて米国債のキャリーがプラスになれば、日本国債への海外からの資金流入は鈍る可能性があるとみているが、FRB当局者は追加利下げに慎重な姿勢を示しており、政策見通しは不透明。日銀の植田和男総裁も次の利上げについて明確なシグナルを発することを避けている。