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優生思想と経済のイヤな関係。日本は負の歴史を繰り返してしまうのか

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webマガジン mi-mollet

今年の6月、自民党広報の公式ツイッターが憲法改正の必要性を訴えかける目的で「ダーウィンの進化論」からの引用であるとして、変化できるものだけが生き残るという趣旨のツイートを行い、批判が殺到しました(実際にはダーウィンの引用ではなく、ダーウィンは変化できる集団だけが生き残るとは主張していません)。  人(あるいは国民)は、自身が他よりも優越でありたいとの潜在的な願望を持っていますが、これがねじ曲がった形で発現したものが優生思想といってよいでしょう。こうした思想の台頭を防ぐためには、社会全体でこの問題を共有し、対処することが重要ですが、それだけで解決できるとは限らない面があります。  実は優生思想というのは、その思想を持つ本人や集団の経済的な環境と密接な関係があるからです。 ナチスが優生思想を掲げた背景には、第一次世界大戦の敗北をきっかけとした経済危機があります。大戦終了後、戦勝国はドイツに巨額の賠償金を課し、ドイツが国債を大量発行して賠償金の原資を賄ったことから、同国の財政は完全に破綻。ハイパーインフレが発生し、国民はほぼすべての財産を失ってしまいました。経済的に困窮する国民が増えたことが、極端な優生思想を台頭させる要因のひとつになったといわれています。 日本でも戦後、ハンセン病の患者に対して、断種を強制したり隔離を行うなど、優生思想に基づく恐ろしい政策を実施していた時期がありました(法的には1996年までこの政策は続いていました)。しかし、一方でこうした過ちは二度と繰り返してはいけないという動きも活発であり、少なくとも近年まではそのような社会風潮だったと考えてよいでしょう。 しかし、一連の出来事を見ると、近年、再び優生思想が台頭しているようにも見えます。ネットで可視化されやすくなったという面もあるかもしれませんが、ナチスドイツの例からも分かるように、経済が落ち込み、国民生活が苦しくなると、社会的弱者を抑圧する思想が生まれやすくなるのも事実です。生活保護受給者を激しくバッシングする風潮も近年に特徴的な現象ですから、日本の長期的な景気低迷が何らかの影響を与えている可能性は否定できません。 過去20年、先進国の中では日本だけが成長を実現できておらず、日本は諸外国と比較して相対的に3割以上、貧しくなりました。経済的に苦しくても、健全な意識を持ち続けることができる立派な人もいますが、皆が強いメンタルを持っているわけではありません。 恐ろしい歴史を繰り返さないためには教育が何よりも大事ですが、経済成長によって余力のある社会を構築することも重要だと筆者は考えます。

加谷 珪一

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